広島・竹原に名門酒造あり~ 竹鶴酒造 極秘潜入酒池肉林ルポ的私信 その1

2004年3月 8日 from 出張

 広島からぐぐっと岡山寄りに戻った海辺に、「小京都」と呼ばれる竹原市がある。僕と同じ世代かそれ以上であれば懐かしく思い出せる映画「転校生」にて、主人公が石段を転げ落ちるシーンが撮影されたのはその竹原の小京都と呼ばれる、文化財指定された町並みである。

 その文化財指定の一帯に名門酒造が在る。その名を「竹鶴酒造」という。
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竹鶴といえば、ニッカウヰスキーの社長さんが竹鶴という名字だったり、同名を冠したウイスキーがあったりとして知られているが、実はこの竹原の竹鶴酒蔵こそが本家筋である。
 そして最近のdancyuなどの料理誌・グルメ誌の日本酒特集を見れば確実に出てくる「小笹屋竹鶴」という名酒を送り出しているのはこの酒造である。
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「端麗辛口」などという野暮天な言葉を蹴散らかすように野太い、骨格のがっしりとした味。純米酒にこだわり、さらに吟醸香中心の食前酒っぽい酒ではなく、魚・肉などどんな料理にも比肩しうる強さを持った究極の食中酒を世に問うているのが、この酒造なのである。

 まずはこの竹鶴と僕との出会いから少し書かねばならないだろう。簡単に言ってしまうと、この竹鶴の次女が、僕の大学時代の同期であり親友なのだ
 学生時代の僕はキャンパスの中に畑を創っていたのだが、その同輩後輩を夏合宿と称し、熊本は阿蘇の農園に通っていた。金はないが時間はたっぷりある貧乏学生達である。青春18切符を使って鈍行で熊本に行くのだが、1日ではどうやっても着かない。そこで広島の竹鶴酒蔵に一泊させていただくという、とんでもない暴挙に出たわけである。今から思うと額に汗がにじむが、10人からの学生どもがずかずかと文化財指定の屋敷に上がりこみ、文化財がずらりと並ぶ座敷にてごろ寝をしていたのだ。しかし、現在 広島県議でもある社長の竹鶴寿夫氏は、豪快にがはははと笑いながら僕らを暖かく迎えてくださったのである。この方が竹鶴寿夫社長であられる。
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稀代の食通として知られる同氏により歓待攻めを受け、この僕も超満腹絶品攻めに陥落したのを、昨日のことのように思い出す。

 そして当時(12、3年前だ)、早稲田大学を卒業していきなり酒造に入門したという若手の蔵人、石川さんを紹介されたのだ。でかくて顔がゴツゴツしたその人が、なにを隠そう現在の竹鶴酒蔵を背負って立つ若き名杜氏、石川達也氏だ。すでに僕のblogでも数度お目見えしているので、この顔をご存知の方も多いだろう。
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 学生軍団の竹鶴巡礼は数回を重ね、僕や親友の卒業とともに終わった。その後は時候の挨拶にとどまってはいたが、僕にとって長く、酒造といえば竹鶴酒造であったのだ。

 その竹鶴酒蔵に再会したのは、実に卒業後10年経ってのことだ。この再会を仕組んでくれたのは、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで日本酒業界に登場した、居酒屋「五穀家 日本橋店」の店長をしていた工藤卓也氏だ(現在彼は、同店を辞して別のところにいる)。かの店が主催する日本酒の会に、僕の親友である竹鶴の次女が「やまけんもおいで」と呼んでくれたわけである。その五穀家 日本橋店は、すさまじいばかりの純米酒の品揃えを誇り、かつそれらを燗にして飲ませてくれた。それもそのはずで、日本酒業界とくに純米酒の世界の方ならよくご存じの

「酒は純米、燗ならなおよし」

の名言で知られる、酒の鑑定士 上原先生(あの名作「夏子の酒」にも登場しておられる)を顧問に据えていたのだ。だから、専用の燗付け機があり、すべての酒をを湯煎で最適温度に燗することができたのである。
 あまりの旨さとサービスのきめ細やかさに感動した僕は工藤氏に、自信を持てる商品であるフルーツトマトを10箱送った。彼はそれを様々な料理に試してくれて、感想をきちんと述べてくれた。以来、僕と彼は兄弟分としての契りを交わすようになり、今に至るのである。このblogでもハム創りを一緒に習いに行ったりしている画像があるので、お分かりと思う。下の画像で僕の横で舌を出しているのが工藤ちゃんである。
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 この工藤ちゃん、日本酒蔵元からも愛されている。僕も彼に誘われ多数の酒造見学に活かせて頂いた。そして今回は2度目の竹鶴酒造訪問なのだ! まあ、僕にとっては竹鶴を10数年前から知っていたので6回目位なのだが、、、酒造りの工程をきっちりと見学させて頂くのは今回が初めてと言ってよい。昨年7月にお邪魔した時はすでに酒造りは終了していたので、仕込みの最中である今回は実にラッキーなタイミングだったのだ。

 おそらくどんなグルメ雑誌でも、寒仕込み最中の竹鶴酒造の造りをこのように速報紹介できるものはないだろう。これがblogの最大の強みである。今日から数回にわたり竹鶴酒造をきっちりと紹介させて頂きたくので、ぜひぜひ刮目してご覧あれ。