北海道vs淡路島のたまねぎ対決である

2003年10月31日 from 食材

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 さてジャガイモの次はたまねぎだ。たまねぎの名産地として知られる淡路島から送って頂いたものと、北海道からのものを食べ比べしてみよう。ま、こういう「対決」的なタイトルは本当はよくないのだろうが、やっぱり比較してみたくなるのが人情というものだ。
 ちなみにたまねぎの栽培時期は本州と北海道では正反対である。本州では猛暑を避ける意味合いもあって秋に播種~定植し、翌年の初夏に収穫。北海道ではこれが逆になり、ちょうど秋の今頃に収穫期を迎える。つまり、今回届いたのはおそらく今年度産のものである。従って今回はそれを差し引く必要がある。
 この画像にある2つがそれで、画面右が北海道、左が淡路島である。産地・時期により品種も変わるので同等条件とは言えない。今回は双方とも品種名がわからないので、とにかく食べてみる。外観はさほど変わりはない。
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皮を剥いてみる。淡路のものは白く(美肌?)、北海道ものは既に緑色の縦線が入っている。ちなみに先を包丁で落とした時、北海道ものはすぐに切り口に白っぽい液が滲み出してきた。
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真ん中の部分2.5cmくらいをスライスし、焼いてテイスティングすることにした。こうして断面をみるとまったく組成が違う。北海道産は淡路島産にくらべ鱗片(りんぺん)が薄く細かい。木で言えば年輪が多いということになる。ここで端っこの部分をスライスし、生で食べてみる。淡路産のものは刺激が少なく柔らかい味である。北海道産のものは、口に入れたとたんに強い刺激がこみ上げてくる。これは硫化アリルという化学物質で、タマネギの細胞が壊れた時に生成されるものだ。北海道ものはまだ貯蔵期間が短いため、成分が落ち着いていないのだろうか。非常に荒々しい強さがある。
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 真ん中の部分を、オリーブオイルをひいたスキレットで焼く。塩胡椒もせず、ただ焦げ目が着くまで焼いて食べる。タマネギの甘みは加熱しないと発生しない。加熱調理をして、そのものの味をみなければならない。
 焼きの最中で、北海道産はプックリと内側の鱗片部が盛り上がってくる。水分が多いため、加熱により膨張しているのだろう。鍋からも水分が蒸散するジュウジュウという音が絶えない。
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焼き上がり。焦げ目の付き方にも差異があることが見て取れる。北海道産は派手に焼き色がついている。
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 テイスティング。良く研いだナイフで縦横に切り分け、内側から試食する。予想通り味には大きな差が出た。あれだけ刺激成分を多く含んでいた北海道産だが、味の濃さという点では淡路産の方が強い。甘みもそうだ。北海道産はやはり水分が多く、細胞組織も柔らかい感じで、歯触りがしっかりしていなかった。淡路島産はどうどうたる甘みと香りと歯触りのバランスを誇っていた。北海道産も最適条件下で貯蔵し、水分含有量を落とし熟成させればまた違ったかも知れない。

 ジャガイモ3つにタマネギ2個分を食べるとさすがに腹一杯になってきた。しかし農産物はやはり面白いものだ。産地×品種×栽培方法という方程式で、無限に味が変わってくるのだ。どれ一つとして同じものが生まれない。今回は平たく言えば淡路島産の方が旨いということになるが、条件が全く違うので、断言するのは的はずれだ。第一、大きな面積を機械を使って集約的に管理していく北海道方式と、小さい面積で丹念に手をかける本州方式では次元が変わる。そして北海道産のタマネギがなくなったら、廃業せざるをえない業者が沢山いるのだ。

 従って食べ比べしてはみたものの、どちらがよいかという話はできないのである。また新しいタマネギが生産者レベルで入手できたら試してみようと思う。