浅草寺の羽子板市のマズイ煮込みが楽しい

2003年12月21日 from 首都圏

 「羽子板市をみないで文化を語ってはいけない」という友人に連れられ、浅草寺へ。
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羽子板というものが、専門の市が立つようなものだとは思っていなかったので新鮮。一通り観ると、店ごとに羽子板の盤面のデザイン、歌舞伎役者や舞妓の描き方が微妙に違うのがわかって面白い。
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 でも、僕の関心はそっちよりも、寺の裏手に出ているテキ屋街だ。お好み焼き、焼き鳥、煮込み、カルメラ焼きなどの屋台が並んでいる。ここのモツ煮込みが、なかなかいい具合にマズイと友人が言う。それはかなりソソル。テントの中で寒がりながら、マズイ煮込みで一杯やるというのは、いい構図ではないか。

 一通り観て回る中に、カルメラ焼きの屋台があった。うらぶれた感じの、ハンチング帽をかぶったじいさんが絶妙な手つきで焼いている。砂糖をお玉に入れ、コンロの火でグラグラと煮立てる。それも、結構な強火で、はらはらするくらいの時間、煮立てつづけている。そしてこちらのはらはらが限界にきそうなところでお玉を火からはずし、重曹を少し入れ、かき回す。その間、濡れ布巾にお玉の底をあてたりして温度調節に余念がない。重曹をいれて少しすると、シュワワっと泡のテクスチャが変化してくる。だんだんと色が白っぽくなり、固形を目指しだすのだ。みるみるまに盛り上がり、楕円のボール型に。お見事だ!これは伝統芸能といっていい業だと思う。
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 ということで買う。2つで200円。アツアツのを食べると、砂糖の甘味とホロホロの崩れ感がたまらない。でも、甘いので半分でギブアップだ。
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 さて寒いのでモツ煮込みに向かう。やきそば、煮込み、おでんなどの集合屋台に入る。冷やしラムネを頼み、モツ煮込みと焼きそば。煮込みは500円で、内容物が多い。モツのシロが多量に入ってきた。味噌仕立ての煮込み汁だが、、、 本当にまずい!なにがまずいかといえば、汁に旨味がほとんどないのだ。味噌と醤油といくばくかの酒で、モツを煮たというくらいのものだ。なおかつ、モツはところどころに、まだ煮えきってなさそうなのがある。毎日足しながら煮ているからだろう。
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 しかし、美味しい。まずいとおいしいの線引きは難しいのだが、このモツ煮は、料理としてはマズイのだけど、食事としては美味しいのである。これは重要なことだ。焼きそばも、中太麺にキャベツ、紅しょうがをソースで味付けした代物だが、これも不味くて美味しい。いや、けっこうこの焼きそばは食えた。
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 この屋台には、焼きそばの鉄板や煮込みの鍋前にいる若い衆と、客から注文をとって指図するおっちゃんで構成されている。ここのおっちゃんはあまりうらぶれたところのない、かれているけど活発なエネルギーを発散している。それをぼんやり観ながら、さっきのカルメラの屋台のおっちゃんを思い出した。あのハンチング帽、そしてずっと歓声を上げながらみていた我々に対して、最後まで愛想の一つも飛ばさなかったあのおっちゃんは、やはりテキ屋界の裏街道というか、最後の場末にたどり着いているのだろうか。だとすると、テキ屋界でのキャリア組という連中はどこにいるのかな、、、
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 マズイ煮込みを食べ終わり、ブラブラと流しながら、浅草の1駅むこうの本所吾妻橋「わくい亭」へと向かいながら、まだ同じことを考えつづけていた。