温かく柔らかい煮蛤(にはまぐり)に心も温まる 寿司匠

2004年1月15日 from 首都圏

nihama1-s.jpg 河豚(フグ)鍋をいただいた後に、もう少し何か食べたいと思う。でも、せっかくの河豚の後に、ラーメンという選択は適切ではないだろう。やはりここは握りを3貫程度つまんで帰るというのが、粋というものだ。

 匠の暖簾をくぐり、とりあえずネタケースを眺める。冬のこの時期、大ぶりのネタが目立つ。カワハギなんぞ、肝がフォアグラ大だ。この店の売りであるキンメも半身がやたらとでかい。
さっと選んで、
「赤身のヅケと〆鯖とキンメ。あとお茶ね。」
と通す。
 3貫全て以前の記事で写真を掲載しているからここでは割愛するが、どのネタも一年の中で最も旨い時期を迎えていると断言できる。締まりがよく、かつ旨味と脂の乗りが最高潮に達している。

と、加藤ちゃんがボソッと、

「今日、煮ハマがあるんだよね、、、」

と言う。高いので滅多に仕入れない鹿島の地蛤(ハマグリ)を、今日はフンパツしたらしい。煮ハマと言えば、江戸前寿司の要と言えるネタの一つだ。しっとりと甘辛く煮たハマグリの握りは、噛めば噛むほど味が出てくるので、永遠に噛んでいたくなるネタの代表格だ。僕の好きな筑地場内の「寿司文」の煮ハマと煮貝(アワビ)は、江戸前の粋であると言いたいネタだ。

 さてこの煮ハマ、匠では高い部類に入る1貫700円だ。でも、酔っぱらってるし、河豚はご馳走になってしまったし「食うよ~」と頼んじゃうのだ。

 あいよ!っと握られた蛤は、実にほんわりと柔らかな姿形でシャリの上に横たわっていた。

nihama2-s.jpg

よくみかける煮ハマは、もう少し照りが出るほどに煮詰めてあって、歯ごたえがあるような感じ。しかし加藤ちゃんの煮ハマは

「柔らかめに煮て、少しだけあぶって出します。」

この最後のあぶりが効いていて、人肌程度のぬくもりが、旨味を倍増させる。大ぶりに拡がった握りを一口でほおばると、歯を立てた途端に柔らかな身からジュースが滾(こん)と湧き出てくる。しっかりした味の一歩手前の繊細で淡いアタリだ。それに穴子のツメを一捌け塗っているのが、実にまだらに効いてくる。

「、、、本当に、旨いねぇ、、、」

しみじみとしてしまった。
あまりに美味しいので、本日はバカ食いする気になれない。4貫で大満足して帰ることにする。

帰る前に加藤ちゃんに言われた。

「やまけんさんがインターネットに書いてくれたおかげでお客さんがそれを見て来るんだけど、住所とか書いてないからわからないんだってさ!」

あー そうだっけ?

■「寿司処 匠」に至る路
・地下鉄東西線で、船橋方面に向かって先頭車両に乗り、門前仲町で降りる。
・目の前の階段を上がり、出口2番を地上に出る。
・出ると目の前にある大通りが永代通り。それを右に5メートル歩く。フルーツ屋の角を右に入る。20メートル歩くと突き当たるので左へ曲がる。そのまま15メートル歩いて右に暖簾が出ている。

電話番号:03-3643-1224

※このページを見て行く人はぜひ「出張食い倒れ日記を見てきた」と申告してちょーだい。特典は付かないと思うけど。

無論、煮ハマがあったら速攻で頼むべきだ。あまり数を仕入れないハズだからネ、、、