豊饒の大地・北海道帯広編その2 おふくろの味 「かかし」の豚丼とノムさんを味わう

2004年1月24日 from 出張

 JAでの仕事は無事終了した。トラブルにも見舞われず、本当によかった。これに向けて徹夜で頑張っていた後輩もホッとした表情だ。
「お疲れ様でした!」
「うん、じゃーどこいこうか。何食いたい?」
そう、これから夜の部開始なのである。

 昼から一緒にいて下さる岡坂さんと、そのご同僚の野村さん(ノムさん)がお相手をしてくださる。ちなみに前回もこのお二人に美味い店に連れて行って頂いたのだ。お二人とも生粋の幕別生まれの幕別育ち。ノムさんは岡坂さんの高校の後輩である。
「いや、俺も岡坂さんと課長には頭が上がらないのよ。」
というノムさんはしかし、初対面の時には「こいつぁヤバイ」と思ってしまうムッツリ触れると切れちゃうヨ系の怖さを醸し出している方なのだ。でも段々とうち解けてきてくださると優しくニコッと笑ってくれるナイス兄ちゃんなのであった。
 そして、金沢編に引き続き、このノムさんこそが帯広に於ける味の先導人となったのである!
■ノムさん
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 さて帯広に来るととにかく豚丼しか食ってないということもあり、普通の居酒屋にいってみたいと所望する。そういえば今回も泊まるホテル「パコ」のそばに「かかし」という店があって、そこの豚丼もナカナカだという噂を聞いた。ということで、今回は「かかし」に行くことになったのである。

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■かかし

住所 : 北海道帯広市西2条南10
電話 : 0155-25-5911
営業時間 : 15:00~24:00
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品書きにはやはり海産物が多い。とはいっても、首都圏でみる居酒屋メニューとそれほど変わるわけではない。問題は、そのありふれたメニューの中身が、首都圏で食べられるそれとは全く違うということだ。

■いも団子
 これは北海道では広く食べられているものだ。じゃがいもをマッシュにし、片栗粉を加えてよく練り、団子状にしてあげたモノだ。これにバターと甘辛醤油タレがかかっている。
「これも豚丼系のタレの味なんだよ。」とノムさん。


■ししゃも
 ししゃも、、、実は東京にいる僕らは、ホンモノのししゃもを食べる機会がそうないのである。いっぱんにホンモノのししゃもが出回ることはごくまれで、よく似た別物の子持ち魚が売られているのが殆どだ。
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「ヤマケン、おめぇ、ししゃものホンモノ食べてケ!」とノムさん。
運ばれてきたししゃもは、なんともふっくらとし、かつ水分が適度に載った、我々が食べているものとは別物の出で立ちである。旅館の朝食とかで出てくるのは銀色だが、なんだかこちらのはオレンジがかった色だ。レモンを軽く搾ってかぶりつく。すると適度な塩の利いたジュースがじゅわっと溢れてくる。そして卵がモロモロと崩れる。まったくパサパサしていない!逆にトロリモロリと水分が絶妙なのだ。

「う、ウマいっす!」

「ヤマケン! これを食わないで出張食い倒れ日記なんて書いてちゃ ダメだ!」

そう、ノムさんはこれを言いたかったのだということが判明!ここから怒濤のノムさん責めが始まるのであった。

■イカの一夜干し
「ヤマケン! あのな、イカってのは北海道が一番旨いんだからナ!俺たちなんか、イカにゴロ(ハラワタ)巻いて凍らせたルイベで酒が何杯でも飲めるんだぞ。ま、とりあえずこの一夜干し食ってみろ。」
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 なんてことはない一夜干し、、、にみえた。しかし、驚くほどにふっくらとしたスルメイカの身は、一夜干されることによって旨味を増し、水分が抜けることによって絶妙に官能的な歯触りとなって、歯にむっちりとした弾力を返してくるのであった。

「おう、ちょっとまちな、今、特製ドレッシングつくってやっから。」
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と言ってノムさん、やおらマヨネーズに細工をし出した。
まず、マヨの小皿に七味を入れる。まあそれは我々もよくやることだ。次に、それに醤油を加える。ふうむなるほど。そしてみていると、なんとそこに、日本酒を加え始めるではないか!そして一気呵成にかき混ぜる!
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「これがポイントなんだぁ。知らなかっただろ?日本酒の性質で、いつまで経ってもマヨが乾いたり色が変わったりしねーんだよ。ほれ、食ってみろ」

この特製ドレッシングにイカをつけて放り込む。旨い!結構日本酒がはいっているのにも関わらず酒の香りは殆どしないが確実に旨味が増している。

「これ、「こまい」にも合うからつけてみろ」

と、丸焼きにしたこまいに漬けて食べる。当然ながら旨い。

「海老にもつけてみろ!これはブラックタイガーだな」

と、海老の丸焼きはかなり大ぶり。皮を剥いて特製ドレッシングで食べると、実に旨いのである。
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この時僕は海老に付いている皮は全部剥いて食べたのだが、そこでノムさんすかさず

「ヤマケン! 海老はね、薄皮は残して食べる方がうめーんだよ!そんなことも知らないで食い倒れ日記じゃねーぞ!」

へええええ そうなのかぁ、、、と思ったが後の祭りである。次回また海老で試してみるとしよう。

■ホッケ
さて北海道といえばほっけである。塩焼きを所望すると、「だいぶ小さいな」というサイズのものが運ばれてくる。我々にとっては十分な大きさなのだが、、、

「さてヤマケン、このホッケ、開いてある骨側と骨なし側、どっち側の身が旨いと思う?」

うーむ それは考えたこと無かったけど、、、太陽光に干して旨味成分が凝縮されるのは骨の周りだよなぁ、と思って骨側を指すと、

「違うよ!骨側はな、骨の厚みで干しの旨さが身まではいっていかねーんだよ。だから骨の周りは確かに旨いんだけど、そこの一枚だけなんだよなぁ。で、骨なしの側は、ブロックされねーから、中身まで旨くなるんだよ。食って確かめてみろ!」

食ってみた。確かにそうだ!骨側は骨を除いてしまうと、あとは白い淡泊な肉があるだけだ。しかし、骨のない側は、干された旨味タップリの部分が中まで浸透している感じだ。

「仰るとおりっす!」
「だろ?ヤマケン! だめだよこれくってから日記書かねーと!」

全くその通りだ。そして、さらにホッケの一番旨いカ所というのを教えて頂く。

「それはな、ここだ!」画像参照↓
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ホッケは背開きで開いている。つまり、開いた状態で頭の下の真ん中の部分が、いわゆる「はらす」の先っちょということになるのだ。

「せっかく俺がほじくってやったんだから食え!」

おお、たしかに歯触りがシコッとしていて、脂の乗りも旨さも他の部分とは段違いだ!
この後もしっかりシッポを持って皮をむけ等、実に含蓄の深い叱咤をいただきまくる。

そしてこの店の豚丼を食べたのである。

■「かかし」の豚丼
ここの豚丼は、フライパン焼きである。そして特徴としては、タマネギの千切りが一緒に炒められているのだ。
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「これはね、家庭でやる豚丼でよくやる方法だね。」
なるほど。食べてみる。昼間に食った「鶴橋」の黒豚丼に比べると全然あっさりしているが、これはホッとする味である。タレは甘め、でも適度にしゃっきりした味だ。飲んだ後をしめるにはちょうどよい程よい豚丼だ。

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いや、ずいぶんにたのしませていただいた。
この間、冷や酒が何本も空いている。僕も後輩もかなり酔っぱらってしまった。岡坂さん・ノムさんも酔っぱらっている。

さてこのかかしを出て、我々はすぐに帰っただろうか、、、?
いや賢明なる読者の皆さんにはわかるはずだ、、、これで終わるわけがない。この日最大のクライマックスとなる必殺ストレートがノムさんから繰り出されるのだ。

「ヤマケン! お前、金沢の寿司くらいであんなに日記かいてんじゃねーぞ!寿司はな、帯広が一番うめーんだ!」

ええええええ? 帯広で寿司っすか?それは違うんじゃねーの?と思いながら歩くこと100メートル。帯広駅からすぐの大通り沿いにある寿司屋に我々は誘われたのである、、、

(つづく)