陽光の国・シチリア食い倒れ見聞記・シチリアのさらに南の街シラクーサにたどり着いた!

2005年1月30日 from 出張

シラクーサのバスターミナルは、噴水を中心にしたただの広場で、人気もほとんど無く寂しいところだ。最も、これは夜だからで、朝は大渋滞になるらしいのだが、、、

「とにかくスリとかにだけは気をつけてくれ、本当にやばいから」

といわれていたので、たまに通りかかる人たちすべてが怪しくみえてしまう、、、

シラクーサでは、重シェフが修行していたレストランの長であるパスクワリーノ氏が世話をしてくれることになっている。パスクワリーノの写真は、無二路の壁にたくさん貼ってあるのでよく見ていたのだが、話し始めたら停まらない、相当に面白い人らしい。彼に電話をして迎えに来てもらう。

15分ほどしてライトを明滅させながら車が停まる。運転席から、意志の強そうな目をした体格のいいおっちゃんが出てくる。両手を拡げ、「アー!!」と叫び、嬉しそうに重シェフと抱擁を交わす!この人がパスクワリーノ氏かあ!

パスクワリーノは現在は自分の店はやっていないそうだが、兄弟がリストランテをしているので、相変わらず料理への情熱は濃い。重ちゃんと車のハンドルをたまに放しながら喋りまくっていると、街道沿いのとある店に到着する。ここが、彼の弟ロベルトが経営している店だ。

■ヨニコ

店にはいると、彼の弟であるロベルト夫妻、その息子のアンジェロ達が迎えてくれた。ロベルト夫妻とアンジェロが重ちゃんを懐かしそうに「よく帰ってきたなぁ」(←想像)と抱擁し歓待する。

ヨニコは、本来的には「イオニコ」と発音すべき店らしいんだが、「シチリア訛りだと『ヨニコ』なんだよね」ということだ。この店はシラクーサ中でも一番か二番に素晴らしい景勝地に建っている店だ。

夜だと分からないけど、店のテラスからは昔の石切場だった断崖絶壁が目の前にみえる。

その断崖と店の間に小さな宝石のような入り江があり、夏にはそこで海水浴ができるようにもするという。

店の屋上からは海がパノラマにみえるのだ!

ちなみにこれが翌日の昼間に来た時に撮影した風景だが、どうだろう?本当に美しい、、、


重ちゃんによれば、ここまでの良い立地を持った店もあまりないらしい。

ヨニコはリストランテなのだが、最近ではピッツェリアも併設し、リストランテ/ピッツェリアというような店になったらしい。

「やっぱりシチリアも景気が悪いんだよね。この店はリストランテだから、値段も高めで、地元の人か来にくかったんだよね。だけどピッツェリアだったら結構、大人数でやってくる客が多いと思うよ。」(重シェフ)


さすがにヨニコは格のある店らしく、シチリア中のワインがセラーに収まっている。

僕の大好きな白の「ラ・セグレタ」も発見!これは「秘密」という、ちょっと罪悪感をくすぐるいいネーミングの、すっきりしたワインなんだよね。

ドルチェ担当のコバには、みるからにコテコテのシチリア名物ドルチェ「カッサータ」を。死にそうに甘いらしい、、、

リコッタクリームと砂糖をふんだんに使ったクリームが表面に塗り込まれているんだが、ちょっとこれは一口だけでいいやという外見だ。

テーブルでここ数日間の旅程を打ち合わせる。シラクーサにいる3日間はパスクワリーノの海沿いの別荘に泊めてもらうのだが、その行程で行きたい店を話すと、にわかにパスクワリーノとロベルトが重シェフに説得モードである。例えば豚料理で有名な「マヨーレ」という店に行きたいというと、

「確かに悪い店じゃないけど、お前らが絶対にいかないと行けない店だってワケじゃないぞ!俺が豚料理作って喰わせてやるよ!」

「あの店はもう進歩が停まっていて、同じものをずーっと出し続けてるんだから、やめとけやめとけ」

という感じで、要するに俺のところに来たんだから、俺に任せろモードに突入しているのだった。

「いやぁ、シチリアってところは完全にコネの世界で、知ってる人がいるとなんでもすんなり話が通るんだけど、その分こっちに合わせないと行けないんだよねぇ。」

と重シェフが苦笑いする、まあ、行程はもうすこし考えようということになった。

「じゃあ、飯だ飯!」

テーブルに通されると、厨房で先ほど見学したビッツァが運ばれてくる!

一片はゆで卵が乗ったもの、もう一片はハムやサルシッチャなどの肉が乗ったもので、パスクワリーノが肉の方を指して「ピカンテ!(辛いぞ)」という。ゆで卵の方からかぶりつくと、トマトの酸味にゴルゴンゾーラの香りと塩気がたちまち口内に溢れて実に旨い!

サルシッチャの乗った方はたしかにピカンテで、ペペロンチーノ(トウガラシ)が効いている。これも旨い、、、人差し指で頬をぐりぐりし「ヴォーノ!」とやると、パスクワリーノが事も無げに「俺のレシピだぜ」(←想像)と言う。
写真だと分からないかもしれないが一片が大きいのでかなり腹に溜まるが、もう二片出てきた!今度はトマトを使っていないピッツァだ。


奥のはリコッタチーズに海老などの魚介類が載り、レモン(リモーネ)の皮の千切りが散らされている。こいつを一口食べて、押しの弱い見た目と大きく違う、その豊穣な味にビックリしてしまった!

まず、リコッタの味が濃く、風味が強い!

「反則だよなぁ、こっちのリコッタは安くてこんなに旨いんだよ。香りもコクも全然違うでしょ?」(by重ちゃん)

本当に違う!それと、上に乗ったペシェ(魚介類)の風味の強さだ。といっても、小さなむき海老がパラパラと乗っているだけなんだけど、その旨味が無茶苦茶に濃いのだ!なんで?ペシェを煮詰めたスープでも使っているんだろうか?

「いや、乗せてるだけだね。こっちの魚は処理が全然違うんだよ。魚屋に行くとね、むき海老なんて、そこの息子が学校に行かないで手で剥いてるんだよ。こっちじゃ、魚屋の息子は魚屋になるしかないからね。日本じゃ海老なんて水洗いしちゃうでしょ。旨味が全部逃げちゃう。こっちだと、手で剥いたのをそのままくれるから、味が違うんだよ~」

ふうううむ なるほどねぇええ

本当にこの小さな海老の旨味にはビックリしてしまった。しかも上にちらされたリモーネの皮が素晴らしいアクセントになっている!

「もちろんこれもパスクワリーノレシピなんだぜ!」(←想像)

とパスクワリーノが誇らしげにニカ!っとする。

どうだこの笑顔!この後の三日間、僕らは嫌と言うほどこのパスクワリーノ節の洗礼を受けるのだが、この顔がとにかく彼の内面から放射される強いエネルギーを良く表している!

この後、食後酒を楽しんでロベルト一家と別れてパスクワリーノの別荘へ。

ここは、重シェフが修業時代に寝泊まりしていた家である。使い方を一通り説明をしてくれてパスクワリーノが帰ると、僕らも疲れていたので速攻でベッドに入り、寝ることになったのだ、、、

明日からは怒濤のシラクーサの世界、ではなくパスクワリーノの世界が拡がるのであった!