暑いところの魚は旨いじゃないか! 宮崎焼酎の里・日南は油津で凄まじい魚介をイヤと言うほど食い倒れた!

2005年7月17日 from 出張

このブログには何回も書いているとおり、宮崎の日南にある焼酎メーカである京屋酒造とは長くお付き合いをさせていただいている。商品の販売可能本数を登録するだけで月間500万円以上をたたき出すに至った、同社のWebサイト立ち上げに関わってから、社長の渡邊さんは僕が宮崎に入ると必ず厚くもてなして下さるのだ。

「ヤマちゃん いらっしゃるならぜひお会いしましょう!魚食べたいでしょ?美味しい店に連れてくからさ!」

おおおおおおおおおお
宮崎の魚、油津の魚が食える!

昨年のエントリにあるように、実はこの日南・油津の地魚は最高にうまいのである!怒濤の美味魚群をご確認いただきたい。

■夏真っ盛り! 宮崎出張編 チキン南蛮と日南海岸の魚料理を堪能しまくりhttp://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000371.html
まったく「暑いところの魚は身が締まって無くて不味い」だなんて誰が言ったのだろうかと改心せざるを得ない、劇的な感動が待っているのである。

さて鰻をたらふく食べた僕らは、沼口家にて小さな子供達と戯れた後、速やかに京屋に向かうこととしたのである。

西都市街から1時間15分程度、日南に入り京屋酒造に直行する。あまり声高には言われていないが、しばらく前のNHK連続ドラマで、ヒロインの実家の酒蔵となったのが、この京屋酒造なのである。

「やあ ヤマちゃん!奥さんも沼口君もようこそ!」

と渡邊社長が迎えて下さる。慶應卒で某銀行に勤めた後に蔵に戻ってきた彼は、本当に経営感覚をもちつつ、古いやりかたを継承し、地域振興とは何かを考えながら戦略を練る強者である。

蔵を案内してもらうのももう何回目になることだろう。麹を仕込んでいる室を見せてもらう。日本酒の酵母とは少し違い、雑菌をはねのけるクエン酸が発生するように育成するらしい(違ってたらゴメン)。

これが同社の特徴である甕(かめ)仕込み用の甕だ。土中に大きな甕を埋めているのだ。


「いやぁ、新しいタンクとかを買おうとすると大規模な設備投資になっちゃうからさ、踏み切れなくて古い甕を使っているだけですよ」

と謙遜するがもちろんそんなことではないんであった。この方式で小さく作っていくから旨いというのがあるはずだ。お茶なんかもそうだが、処理する機械が小さければ小さいほど旨いという。大きい機械だと原料全部の個性が取れて均質になってしまうのだ。焼酎も同じことが言えるかもしれないな。いや全然違ったらゴメンナサイ。


これが同社のシンボルとも言える旧型のボイラー。熱効率的には悪いらしいけど、象徴的な存在で、使い続けているということだ。

焼酎の仕込みについては、僕と利き酒師のチエちゃんが書いていた京屋ブログに詳しいので、関心のある方はチェックを。

■京屋酒造ブログ
「京屋酒造の醸造場に潜入!おいしさの秘密を探った!!」
http://blog.e-shouchu.com/archives/2004/10/post_3.html


「さて、メシを食べに行こうかヤマちゃん!」

待ってました!魚だぜサカナ!
油津の幹線道路から細い商店街の脇の小径を入っているのにもかかわらずぶっ飛ばしまくる渡邊社長の運転に必至に沼口君がついて行っているうちに、日南の繁華街の中の一軒家に出た。

■四季の味 「みどりや」
宮崎県日南市材木町6-2
0987-23-6201

「ここはねぇ、最近僕がずっとご飯を食べに通っている店なんだよ。ココのマスターとはホントに長い付き合いでね」

とカウンター内の精悍なマスターをみやると、マスターもニヤリと返してきたのである。

「じゃあ先ず、刺身をどうぞ!」

と運ばれてきたのが、このビンビンのマグロ、ヒラメ、戻り鰹、イカである!

な、なんだなんだ なんなんだこのマグロは!?ベリー霜降りのこの肉質に釘付けなのである。

「もちろん本マですよ!この近海で揚がるんですよ。築地に行く前にこっちの市場にも落としてもらって、もちろん生で食べるから最高なんだよ!」

ほ、ほんとうかよ~ 宮崎でこんなマグロに合うとは思っていなかったので狼狽。さっそく小鉢に醤油を落とす。

「あ、ヤマちゃん、それは甘い醤油だけどいいの?辛い醤油もあるよ。」
と渡邊社長。そう、日南では甘草などを使った甘めのトロリとして醤油が一般的なのである。でも、外から来た人はこれを嫌うことも多いため、大概の店では関東風の濃い口醤油も置いている。

これが甘口の地醤油である。

「いや僕は甘口も好きですよ。宮崎にきたらやっぱり甘口でしょう?」

と訊くと、意外な答えが渡邊社長から帰ってきた。

「うーん そうとも言い切れないんだよ。実はねヤマちゃん、うちの蔵では僕が推さない頃までは醤油も少し醸造していたんだ。祖父の時代だけど、祖父の好みで、関東風の醤油を作っていたんだよね。だから僕は昔からそのキリッとした辛口の醤油が大好きでね。甘い醤油は好きじゃないんだ。」

な、なるほどぉ いちがいに宮崎は甘い醤油処だとは言えないのであるらしい。ちゅうことで、甘口と辛口を同割りにした醤油をこしらえて使うことにしたのである。

このマグロがやっぱり絶品!多少筋が入っていたが、その肉質は最高である。

鰹もまた旨い!皮目を炙ってからも水にさらさないのがここのマスターの流儀だ。

「洗うと旨味が流れちゃいますよ!」

ほのかにぬくもりが残り、炙った皮目が香ばしい香りを立てる鰹は、しっかりネットリした身に戻りの旨味を蓄えていて、実に旨い。

「ホントはね、この辺で『コップン』て呼んでる鰹があるんだけど、これを食べさせてあげたいねぇ。この辺の漁師が、漁が終わって港に帰る寸前、自分の家用に鰹を釣るんだ。そのまま持ち帰ると、身が硬直する前だからか、ゼリーみたいにプルンプルンの身なんだよ!包丁で切るのも大変でね。これが数時間経っちゃうと普通の鰹になっちゃうから、ホントに幻なんだよ。」

うおおおおおおおおおおおおおおおおお
コップン食いてぇえええええええええええええええええ
という叫びが虚しく日南の虚空に消えていくのであった。

それとあまりに旨くて写真撮る間もなかったんだけど、ヒラメが最高に旨かった!

刺身はこれだけではない。気になるのを次々に頼んでしまった。

■平子鰯の刺身

江戸前の入梅鰯よりも丸々としているのがわかる!白く脂肪をまとったなまめかしい姿態のまま、舌の上で溶けていった!

■地蛸

■〆サバの炙り

光り物マニアの僕は、サバがあれば必ず頼むが、この〆サバが実に最高だった!

「こっちのサバは本当に旨いですよ。もちろん刺身でも食べられますけど、どんなに鮮度がよくても〆たほうが好きなんで、、、」

というように、絶妙な加減で〆たサバの皮目を炙り、出してくれる。このサバの身が、鮮度がいいのに脂が乗りまくっているのでトロトロなのだ!
「う、旨いよ、、、」

我々三者、絶句である。
そうそう言い忘れたが酒はもちろんのこと、京屋酒造が誇る芋焼酎「かんろ」。しかも「スーパーライトかんろ」という、地元向けしか売っていない大ヒット商品で、軽やかに薫り高い旨口の焼酎なのである!

「ヤマちゃん、遠慮してるんじゃないの?どんどん頼みなよ。実はね、マスターは刺身とか和モノだけど、息子さんが洋食メニューを作ってるんだ。これが旨いんだよぉ!」

ほほう!そういうことであったか!

メニューを観ると、魚介系のグラタンやコロッケの洋食メニューが豊富だったのだ。じゃあじゃあ頼んでみようではないか。

、、、と、これが予想を軽く上回るハイレベルに研ぎ澄まされたカウンターパンチの連続だったのである!

■魚介グラタン

最初に運ばれてきた定番料理グラタンは、一本丸ごとのカニの身にイカ、蛸、デカイ海老、ホタテなどがギッシリと詰まっているのだが、具材をまとめるホワイトソース、いやこれは正式にペシャメルソースといわなければならんだろうソースが実にしっかりとしていて旨い!

■メヒカリの唐揚げ

このメヒカリ、軽く粉をはたいて揚げているだけで、手前にある茶色味がかった塩をつけていただく。これがなんと!

「カ、カレーの香りじゃねーか!」

そう、ほのかに薫るカレー塩なのである。メヒカリの、上品で芯の通った旨味を引き立てる、かなり技ありのチョイスである。天晴れだ!

■カニクリームコロッケ

このコロッケが出てきて「おっ!」と思ったのだ。みてお分かりの通りミートソースの上に俵型の大ぶりなコロッケが載っている。そのボリュームたるやかなりのものである。

中身はカニを先刻のグラタンのペシャメルの濃度をもっと強めたものでまとめているのだろうか、粘度が高い。

これにもカニがぎしっと詰まっている。中身の濃厚な旨さとミートソースの肉の旨味がプラスされて、惚れ惚れするような熱々の一皿に仕上がっているのだ!

■鶏のセセリのチキン南蛮

出ました宮崎料理チキン南蛮!しかし実はこれが、僕がチキン南蛮を食べてきた中でも最高峰といえる一皿だったのだ!
セセリ肉というネーミングは、胸や腿、手羽といった、骨から剥がし易い身肉ではなく、ガラに残った肉を「せせる」というところから来た言葉であったと思うが、これは首肉を中心に剥がしたモノのようだ。細長い、ササミ大のスティック状の揚げチキンに、南蛮酢とタルタルを合わせている。早速一口食べてビックリした!劇的に旨い!

チキン南蛮の鶏肉は、胸肉を使う場合とモモ肉を使う場合でかなり味の傾向が変わる。チキン南蛮の元祖である小倉チェーンでは、胸肉を使う。胸肉には脂があまりないため、バサバサしないよう薄く伸ばして衣を強め煮付け、濃厚なタルタルでたべさせる。モモ肉は弾力があり旨味も濃いため、それに合わせた味付けにする。そして、このみどりやが使うセセリ肉は、それ単体で実に濃い旨味を持ちながら、モモ肉とは違うシコシコした弾力を持ち、そしてモモ肉以上の上品な旨味を湛えているのである。これに合わせる南蛮酢も強めの酸味と甘さ、一方のタルタルには卵を多く用い、フンワリ優しい味に仕上げている。

「こ、これ絶妙だ!」

この時ご飯を頼んでいたら、大盛り2杯食べてしまっていただろうと思われるのである、、、

いや、洋食部門の息子さん、実に素晴らしい!

「ここは家族仲がよくてね。マスターの人徳だろうけど、子供達が親父さんを慕っているんだよ。ほら給仕の女の子も娘さんだしね。」

照れくさそうに笑って顔を斜に向けるマスター。親子仲良しな店なのである!

さて、そろそろご飯モノで〆たい。

「マスター、何かごっついものをご飯にどどーんと載せてくれませんか!?」

というリクエストにニヤリと笑い、「はいよ!」と手早く作ってくれたのが、あの超絶の本マグロの剥き身をどんぶりご飯に載せ、卵の黄身を落としたマグロトロ丼である!

ぐおおおおおおおおおおおお
もう何も言うことはない。甘口醤油をタップリと回しがけし、濃厚に匂い立つマグロのトロトロを感じながら掻っ込むだけである。

食った!
しかしまだ俺は物足りない!

「マ、マスター、もう一杯、、、この釣りアジで作ってくれませんか!?」

と、ばかでかい釣りアジ(大型のサバくらい)の丼を所望!

もう狂乱の食欲状態で、かろうじて食いかけを撮影。

コリコリシコシコとした釣りアジの感触は、なぜか江戸の粋筋の女を想起させる!

「いやぁ、、、旨かったぁ!」

「そうか、よかったよかった!まあここならヤマちゃんが旨いっていうと自信はあったよ。」

一同大満足である!ご馳走様でした渡邊社長!

いや本当に大満足の店である。宮崎の日南を訪れる人はぜひ足を向けてみて頂きたい。刺身など和食の旨さはもちろん、息子さんの作る洋食も絶品である。

「ごちそうさまでした!」

渡邊社長とお別れをし、一同シーガイアへと戻る。今日はよく食べたけど、量じゃなくて味に感動しっぱなしである。鰻そして海の魚めいっぱい。どちらも旨い宮崎は、かなり最強度の強い國である。だから、僕にとって宮崎は、老後に住みたい地域のトップ3に入っているのであった。

んー 書きながら腹が減ってきました。でもこの食欲は、その辺の海鮮丼とか食べても落ち着きそうにない。罪な店だ、、、