狂乱怒濤の北海道は、豚スタ・牛スタから幕を開けたのであった!

2005年7月19日 from 出張

さて北海道である。

今回の出張は、まずはJA幕別町での商談だ。JA幕別町といえば、十勝の帯広で、長いもと大根、レタスについては有名な産地だ。そして、僕の食い倒れ日記を昨年から読んでいる人であれば、あまたある豚丼関連のエントリが、このJA幕別町の岡さんとノムさんというお二人による導きで実現していることを思いだしてもらえるだろう。

彼らとは3年前に、農林水産省関連のプロジェクトを一緒にやらせていただいて以来のお付き合いだ。ナガイモの箱にRFIDタグを貼り、農協~卸~仲卸~小売までトレーサビリティ情報を流通する実験をしたのだ。かなり困難を伴う実験で最初は躊躇されたが、東京と帯広を何度か往復する中でなんとか実験を成功裏に導くことができた。その過程でだんだんと仲良くさせて頂けるようになったのだ。

「まあ、あれさ。実際に足を運んでくるヤツには、俺らは優しいョ。一度も顔出さないで『大根くれ』っていわれても出さないけどなぁ」

とそういうことなのだ。で、その後もいろんな相談を僕にしてきてくれる。ありがたいことなのだ。

さてこのJA幕別町で有名なのは、なんといっても個性的なジャガイモであるインカのめざめだ。栗とサツマイモとナッツを合わせたような、とびきり旨いジャガイモ品種。これを日本全国で一番大きく栽培しているのがJA幕別町で、およど50haくらいの作付面積を誇っている。

「やまけんがよ、前にホームページで、浦幌の漁師から送られたインカのめざめが旨いって書いてあったろう?ふざけちゃいけないようちのを食わせてやっからよ!」

と言ってノムさんが車中で携帯でJAの女性に指示を出していたからだろう、挨拶をすませた僕が椅子に座ると、ほかほかの芋が出てきた!

これがインカのめざめという品種のじゃがいもだ。切り口が鮮やかな真っ黄色になっているのがおわかりだろう。通常、9月に収穫されたジャガイモを低温貯蔵して越冬させると、でん粉が糖化して甘くなる。そう、ジャガイモは堀たてよりも、貯蔵したほうが旨くなるのだ。

しかしこのインカのめざめは越冬どころではなく、10ヶ月も経っている。こんなのは食べたことがないぞ!

「まあ食べてみろよヤマケン。そんな芋、全国でもここにしかないぞ。」

といわれるがままに一口食べて仰天した! 甘い!

ここまで甘いインカのめざめは、お世辞抜きで本当に初めてである。ただし10ヶ月も貯蔵していると、表面にはカビが浮くので、それを払わねばならないが(芋自体がかびるわけではない。芋に付着している土が黴びるのです)。

こんなに旨くなるなら全ての芋を貯蔵すればいいのに、と思われるかも知れないが、貯蔵すればするほど芽が出てきてしまったり、傷んで腐ってしまったりというリスクと、貯蔵コスト(場所と冷蔵)がかさんでしまうのである。ということでこの奇跡的な貯蔵芋を食べることが出来たのは僥倖といえるだろう。

「やまけん、これを消費者にもっと知って欲しいんだよ!なんかやろうぜ!」

ま、まじ?
そんなんいくらでもやれそうじゃん!
ということで今年度はインカのめざめを知って頂くキャンペーンを実施することに決めたのである。無論、このブログで紹介してきた浦幌のししゃも漁師である近江さんや、更別でジャガイモを生産している十勝やっちのも紹介する。ジャガイモ饗宴といこうではないか。

「じゃあメシ食いに行くかい。ヤマケンに今回なにたべさそうっかなぁ。そうだな、夜にあんまし食べられないように、昼飯でガツンといっとくかぁ!」

といいながら15分ほど車でぶっとばしたところに、いかにもトラックの運ちゃん御用達のドライブインがあった。

■ドライブイン八重洲
住所・正確にはわからず。「国道38号線新川」あたり。

店内には、ガテン系労働者がいるわいるわという感じだ。そしてなぜか、タバコの煙とは違う、スモーキーでジューシーな白煙が、そこここで立ちこめている。

「あれが牛スタだぁ」

牛スタ=牛スタミナ定食である。そう、鉄板の上でジュワーと焼けているその白煙が、各テーブルからたなびいているのである!

「ここはね、牛スタと豚スタがあってね、ヤマケンはどっちも食え」

とノムさんが言う。いいねぇ、高校時代からとにかく「スタミナ定食」などスタミナという言葉が付くモノには目がない。店のおばちゃんがやってきて、先ず一言目に「ノムラさんは豚スタだよね?」という。なんだ、決まってるんジャン!

「ん、でこいつはね、よくたべっから、豚スタと牛スタ持ってきて!」

驚くおばちゃんをヨソに、各テーブルにたなびく煙を観ていた。調理場ではガタイのいい親父がフライパンをガシガシと振っている。

「おまちどおさま!」

うおおおおおおおおおおおお
出てきた!白煙どころじゃないぞ、噴煙が立ち上っている!!!!

「はいこっちが豚スタね」

ぬおおおおおお
牛スタと豚スタは全く違うではないか!
牛スタはタマネギと牛肉を、ニンニク入りの醤油ダレで焼き付けたもの、豚スタは、どちらかというと豚丼のタレのような甘辛い味付けで炒めたモノだ!芸が細かい!

実に壮観な風景だ。ご飯はもちろん山盛り。事務所で芋を5個くらい食べたにもかかわらず食欲の頂点に達している僕は、狂乱しながらむさぼり食べる!

いやしかしこの豚スタが実に旨い!牛スタも旨いが、とくに際だっているのは北海道の豚肉の旨さだ!フンワリして、脂が上品で、そして味が濃い。北海道の豚肉はあきらかに本州のと違うと思う。その肉に豚丼を思わせる、ほのかに甘い醤油ダレの味が絡まっているのだ。甘過ぎかと思うと、瞬間にタマネギのシャクシャク感がアクセントになり、嫌みを感じさせない!

「ヤマケン、そのマカロニサラダとキャベツを、マヨネーズかけて混ぜると旨いんだよ」

おお、恒例のノムさんチェックが出た!このノムさん、モノを如何にして旨く食べるかということについてはエキスパートなんである。

いやしかし 豚スタ&牛スタはかなりの分量である。食いきってしばし呆然。ご馳走様でした!
これを読んでいる方の数%は、本日の飯はスタミナ定食で決まりだろう(笑)

帰り道、長いもの畑を視察。

こんな感じで百メートル以上も長いもが植えられているのをみることができるのは、北海道か青森だけである。

さらにその帰り道、先ほどのインカのめざめの畑へ。あいにく曇り空だが、やっぱり緑はいい。完全な自然状態もいいが、僕は農地が大好きだ。

人間が区画し自然の摂理に沿って植えた植物群。自然とは克服すべきものではなく協調するものということだろうか。

なんてことを考えながら商談に戻る。今晩はこれ以上に食べることになるんだから、頭を使ってカロリー消費しないといけないのダ!