ナス大爆発! 巾着ナス、賀茂ナス、米ナス、山科ナス、梨ナスの大食べ比べ大会をやった! その3

2005年8月19日 from

さて蒸しでの特性は、賀茂茄子、巾着茄子ともに興味深い内容が見てとれた。そのまま今度は揚げ茄子の部に移行する。

巾着茄子は、ミッシリと詰まった肉質のため、しっかり揚げても形がへなへなとならない剛直さを備えている。ただしそのような硬めの揚げ茄子を好む場合にはいいが、柔らかい揚げ茄子を好む場合は、他品種の方がいいかもしれない。

対して賀茂茄子は、田楽などの揚げ物の好適品種だけあって、文句無しの味わいだ!

熱が通り油で脱水された後も、グズグズに崩れることなく形を保ったままになるところが、細胞力というか、強さを感じさせる!

賀茂茄子自体に水分が多量に含まれているため、揚げの火の通しはじっくりする必要がある。ただしいったん火の通った身肉は、サクリという茄子特有の食感が残りつつも、トロッとした田楽の舌触りが非常に心地よい!

さてこれら和種の茄子とは違う特製を示すのが長島農園の米茄子だ。米茄子は西洋品種と和種を混合させたもので、ヘタが緑色、卵形の球体になるのが特徴だ。通常店頭に出回っている米茄子をみて「うわぁ大きいね」という人が居るが、実はもっとでかくなる。この長島農園の米茄子をみればそれがわかるだろう。

さてこの米茄子は揚げると本当にトロトロ、クリーミーな肉質に変化する。特に長島農園の米茄子は、フレンチの名店カストールの藤野シェフが絶賛している通り、豊かな水分ととろける肉質、まろやかな香りが相まって、高いレベルの茄子になっている。この米茄子に関しては、蒸かし茄子など他の食べ方ではなく、徹頭徹尾揚げで食べるのがいいと思われる。

その他の品種についても揚げで試してみたが、あまりいい結果を得られなかった。

同じ茄子でも、品種によって特性が全く違うのだ!かといって、全く「向いてない」というつもりもない。土地によって、ふさわしい食べ方があるのだ。僕のように東京という場所で食べるのと、また違う場所と空気の中で食べるのとでは条件が変わるのである。品種特性の評価は、そうした地域性を無視して客観的に行うものだ。だからその結果に必ずしも従う必要はない。堅いナスの揚げ物が好まれることだってアルだろう。そういうことなのである。

さて、長島農園でよく作られている「焼き茄子」。これは新潟にルーツのある、焼き茄子専用種だ。

ばかでかいその図体から、九州一円の長ナス品種を思うかべることもできるが、新潟で育種されてきたものだ。この焼き茄子、名前からわかるとおり焼き茄子にするのが最高に旨いのだ。網を使って直接火をあてて、内部の水分がグシュグシュ沸いて外ににじみ出してくるくらいまでコンガリと焼く。

そして焼きあがったナスを冷水に浸すのをよく見かけるが、そういうことはしてはいけない。せっかくナスの中で風味のついた水分が、水に放たれることで流れ去ってしまうではないか!だから、熱々のナスのまま、皮をフォークなど使って剥いていくのである。

こうして出来た焼き茄子は、中から染み出てくる汁が「うそっ」と思うほど甘く、焼き芋のようなこんがり風味がついていて絶品である。肉質は柔らかくこれも溶ける感じだ。皮がすこし固くなるので、焼き茄子にして皮を剥いてしまうと丁度良いのである。

巾着ナスと一緒に沢山入れてくれていた梨ナスは徹頭徹尾、浅漬けが旨い。と思っていたのだが、せっかくだからこだわり漬け物を創る「べにふじ」の石川さんに送り、本漬けにしてもらったのだ!

これが大ヒットクラスの旨さ。オーソドックスな糠漬けだが、ギュウギュウに発酵しているのがこの色からもわかるだろう。普通のナスだと、とろけてしまう浸かり具合だ。

しかし、さすが身が引き締まった梨ナス、形状もしっかりしているし、糠が染み込み、発酵した身肉にもシャクッとした食感が残り、食べでがある!

さて長岡の市場に勤めるJINが、ナス以外にもいろいろと送ってくれた。

瓶詰めになっているのが巾着ナスのカラシ漬け、袋に入っているのが粕漬けと味噌漬けだ。

巾着ナスは食感が強いため、その硬さを浅漬けにするよりは、本漬けにした方が味わい深くなると思ったのだ。と思っていたらJINが送ってくれた。このカラシ漬けの瓶詰め、見事に黄色いカラシの中に、巾着ナスの肉片がゴロゴロと漬け込まれている。

一口いただくと、鼻につーん、頭にきーんとなるほど強いカラシの香りの中から、コリッコリッという巾着ナスの歯触り、そして甘いナスの汁が染み出てきて、これはかなり旨い!

思わず白飯一杯、これで平らげてしまった!

味噌漬けと粕漬けも非常に面白い商品だった。

味噌漬けの、タップリと漬かった感が漂う断面だ。浅漬けと本漬け(古漬けともいう)は全く違う。素材が発酵して初めて本漬けというのだ。この本漬けになった果肉は、当初の特性とはまた違う味を発揮する。

味噌漬けは少し塩の加減が効き過ぎとも思えるが、それは新潟の極寒な冬がそうさせるのだろう。対して粕漬けはあんばいも丁度良く、酒粕の風味もかなり効いていて非常に乙な味がする!

結局漬け物だけでご飯が二杯食べられてしまった!素晴らしいパフォーマンスである!
この漬け物を販売しているのが下記の会社だ。関心のある方は取り寄せしてみては如何だろうか。


■有限会社たちばな
http://www.tachibana-monozukuri.jp/karashinasu.htm

さて 京大の大石が送ってくれた山科ナスは炒めていただいた。

「おまえは繊細な京野菜をそんな濃い味で、、、」

とまた怒られそうなのだが、コレが旨いんだからしょうがない。個性のあるナスは、どんなに濃い味付けのもとでも風味を発揮するものなのだ。堪能した。

いやー
ナス最高!しばらくナスは食いたく無くなるかと思いきや、そんなつもりにはまったくならない!不思議なものだ。とにかくナスという魅力的な食材、これから秋にかけても旬である。巾着ナス、賀茂ナスはもうしばらくすると終わりの時期になるので、注意されたい。

長岡のJIN、京都の大石、三浦の長島農園の勝美君、どうもご馳走様でした!