米国産牛肉がやってくるが、、、

2005年12月13日 from 食材

ニュースで報じられている通り、米国産牛肉の禁輸が限定的に解除される。生後20ヶ月齢以下の牛に限り、かつ日本側が示す諸条件を満たすものだけということになっているがどうなるだろうか。農水副大臣は、科学的知見に基づいた結果だと述べているらしいが、食品安全委員会はきちんとした分析を行うにはデータ不足であると条件づけたうえで「約束事が守られるのであれば危険性は低い」と言っているのであるから、きちんと意識のフィルターをかけて読まなければならないだろう。

こうした話がここ数ヶ月は話題になるだろうが、重要なのは今のタイミングではない。禁輸解除当初は、米国側のメンツにかけてもチェックを厳しくして確かな品質のものを送り込んでくるだろう。また、輸入量自体が非常に少ないため、市場に出回る量も一部に限られる。また、当初は様々なオーバーヘッドコストが乗るので、外食・加工食品業者が取り扱うにはそれほどうま味のある価格にはならないだろう。

問題は、この議論が忘れられる頃だ。国内BSE問題が勃発した2001年9月以降、牛肉の消費は一時的に減ったものの、1年半後にはほぼ市場価格は発生前のレベルに復活している。米国の牛肉業界も輸入業者も、国内の実需者も「とりあえず1年後には回復させよう」と思っているはずだ。
だって、消費者という存在はうつろいやすいのだもの。
だからきっちりと今後の流れを観ていかなければならない。忘れた頃が一番重要なのだから。

一方、国内の和牛子牛の価格が異常なまでに高くなっている。一頭200万円という高値を付ける市場がいくつもでてきている状態だ。数年前には50万円で高値だったことを考えると以上だ。子牛価格が高いということは、それを買って肥育して成牛に育る肥育農家にとっては、売価が倍以上にならないとつらいということだ。しかし小売段階で牛肉価格が4倍になっているかと言えばそうはなっていない。おそらく米国産牛のBSE問題以降、消費者は「牛肉が高くなった!」と思っているかも知れないが、それで全ての農家が儲けているわけでもない。それどころか子牛価格の上昇と、一方で販売価格の据え置きで経営が続かない肉牛肥育農家も多いのだ。

これから考えていかなければならないことは何だろう?
「危ない牛をきちんと発見して排除すること」
も重要だけども、それよりもっと重要なことがあるはずだ。
それは、
「BSE等のコントロールの難しい疾病が発生しないような、安全な畜産手段を推進すること」
であるはずだ。

現在の畜産のメインストリームは輸入穀物飼料に依存している。だからアメリカ産牛肉を食べなくても、実はアメリカ等、外国の影響を僕らは受けているのだ。何でそんなことになっているかといえば、輸入穀物の方がコスト的に安いからである。そして、日本人が好むサシの入りまくった牛肉は、濃厚資料と言われるトウモロコシなどの多投入が欠かせない。

けれども、サシの入っていない赤身中心の牛肉をみんな本気で食べたことがあるのだろうか?岩手県を中心に生産されている短角牛は、草を食べて放し飼いである程度まで育つ牛だ。いまは生産頭数が少ないので出回り量が少ないが、実は一部シェフから引き合いが凄い。生産・出荷量が安定すれば、じつは数年後の目玉食材になりえるインパクトのある牛である。実は秋にこの取材にいってきたんだけれども、ゆっくり書いている余裕がない。短角牛についてはいずれビシッと長く書くつもりだ。

これからの日本に必要なのは、もう一度 「われわれが欲しい畜産」 を定義し直すことではないだろうか。その前に、いまの畜産がどのような歴史的背景でどのような現状を迎えているのかを認識しなければならないだろう。早くその辺の話を書きたいものだ、と思いつつ東京版食い倒れ日記の執筆に戻ります。ここ数日がヤマ場です。