可憐なアマユリの花を食べて、罪悪感と恍惚と感動を味わってしまった!

2006年6月20日 from 食材

先日、ユリ課植物の山野草であるアマユリが死ぬほど旨い!という記事を書いたわけだが、数人の読者さんからご連絡をいただいた。

・アマユリというのは方言らしく、正式には「ナルコユリ」が正しいようです。
・広く生息する山野草で、富山県にもあるとのこと。
・山形では、栽培を試みているグループがあり、出荷もできるようになっているとのこと。

このアマユリ、本当に素晴らしい食材だ。しかし、山野草として咲いているのを手折ってしまうのは忍びない。乱獲はよくない。だから栽培がうまくいくことを心から祈りたい。

さて山形県朝日町の阿部さんからまたもや素敵な連絡が!

今日、アマユリの花をおくった。

親父が「一握りだが、おくってやれ」と言うので少しばかりだけれども…。

多分、大きい花目はつく頃には開くものもあるだろうけれど、食えるから安心して食ってください。初めての食感とほのかな甘みを味わって。 二通りくらいの湯かんげんは味わえると思うので、試してみて。私は、さっと湯がいたのが好き。しゃきっとしていて…。 じゃ。

そして、濡れ新聞紙とビニールに丁寧に包まれた塊を開けて、のけぞった!

な、なんと可憐な花と花びらなんだ!驚愕。
ユリといっても大輪のものではなく、一輪が2センチ程度の小さな花だ。ふんわりしたテクスチャ、うす緑色の蕾をさっと湯がいて食べるのだという。早速軽く塩ゆでして、そのまま食べてみることにする。

湯に入れるとすぐにシュルッとしぼむ。ざるにあげて皿に盛り、箸で開く前の蕾を口に運んでみる。
軽くシャクッという食感。中空の蕾をつぶす音。そしてその細胞壁と花弁からにじみ出てくるのであろう、ほのかに甘い汁と、えもいわれぬ香り。間違いなくユリの花の香りが立ち上る!

こんな小さな蕾から、なんと凝縮された深い感動的な味がするものなんだろう!
本当に初めての体験だ。
かっ込むようなまねは出来ない。一粒ずつ、ありがたく口に運ぶ。余分な味付けは不要だ。


嫁さんにきっちり出汁をとってもらって、みそ汁に入れてみる。最後にちょっとアマユリに火を通すだけだ。繊細なアマユリの味と香りと、みそ汁の旨みが調和して、食べたことのない凄まじい汁になってしまった。黙々といただく。

やっぱり自然は偉大だ。
農業は自然の営みではなく、自然の摂理を少し応用して人間に適した作物を得るための技術だ。自然界には肥料は存在しないが、農業では肥料を使う(一部、使わない農業も存在する)。いままでいろいろ試したけれども、味の組成に関しては肥料を使わないものの方が断然に美味しいと思う。ニンニクしかり、タマネギしかり。ただし収穫できる量が少ないのだ。だから自然(天然)に生えている野草と栽培された野菜では全く存在が違うのである。

日々野菜を食べながら、ふとこうした瞬間に自然の味をいただくと、衝撃を受ける。この衝撃は忘れないようにしたいものだ。