この作物がなんだかわかったら 貴方はけっこうマニアックな園芸マニアだと思います

2007年9月 9日 from 食材


いったい、この作物はなんだろう?
みなさんが日常的に口にしている者であることは間違いない。ただし、そのままの形ではなく、いろいろと加工されて口に入っていることも多いだろう。家庭菜園ブームだから、もしかしたら飢えたことがある人もいるかも知れないが、それにしても一年目からを植えようと言う人は余りいないだろうと思われる。だから農業関係者以外でこれを識っているひとは、そうとうなマニアと言えるかも知れない。

冒頭の写真の実が採れた畑ではないけれども、これがその畑の風景だ。

実はかなり可憐な花が咲く作物なのだ。

淡い紫色、トランペットの口ひろがりのような形状で、虫がたくさん寄って来るところをみると、けっこう甘い香りをさせているんだろう。

これが成熟して実を結ぶと、こんな感じで全体的に黄ばんでくる。

関東ではまさに今、このような状態。莢の中には実がほぼ満タンに詰まり、収穫まであと一歩である。
実は、こんな感じ。

横から見ると、このように4つの房に分かれている。

、、、ということで、わからない人は外観写真をみてもずっとわからないと思うので、中身を割ってみる。
こんな感じで、実というか種子がぎっしりと詰まっている!

この形状と微細さでだいたいおわかりだろう、そう、健康にもよいということで、せんべいやクッキーや、色んな商品に使われているアレである。

そう、これが胡麻(ゴマ)なんである。
この写真はマクロレンズで思い切り寄って撮影しているのでスケール感を感じないかも知れないけど、あまりに小さい莢(さや)の中に、ゴマの種子が一直線にビッシリと並んでいるわけだ。さきほど横から観たときに4つの房に分かれていたが、その一つの房の両側に一列ずつ、ゴマが並んでいる。従って小さな一つの莢ではあるが、かなりの量のゴマが内在しているのだ。

ほんとうに小さい、それこそ親指の第一関節くらいの小ささの莢にこんなにビッシリとゴマが並んでいるのをみると、本当に植物のありがたさを感じてしまう。

僕も昔、自分の畑に少しだけ植えたことがあるが、完全に成熟するまで放っておくと莢が弾けて風などでゴマが飛び散ってしまう。だから早めに収穫して乾燥させ、ブルーシートの上でバンバン叩いて脱粒する。とうぜん、莢のカラとかホコリとかが混じってるから、それを取り除くのがむちゃくちゃ大変。栽培するのは簡単だけど、収穫してから食べるようにするための処理が異様に大変な作物なのである。

それを識っているから、ゴマ150gで200円程度で販売されているのをみると、「うそだろおい」と思ってしまう。自分で作ってみたら、とてもじゃないがそんな価格では申し訳なくて買えない。無論、安いゴマはほとんどが海外産のものだが、、、

仕事柄、全国の農村の直売所を訪れるが、あれば必ず買うのがゴマだ。ゴマはおそらく、輸入物と味が全然違うランキングを作ると、かなり上位に入ること間違いない。風味の濃さが違うのだ。

このゴマを栽培したのは、神奈川県の農業を志すNPO団体の方々だ。まだ成熟途上のそのゴマを、何もせずにそのまま口に放り込み、一粒一粒を歯で噛んでみる。50%以上が油分(ゴマ油だ)であるその粒を奥歯ですり潰すと、プンと香りが立つけれども、それは実に生っぽさが残るフレッシュな風味だ。炒らなくても十分にイケル。この貴重なゴマを分けていただき、ありがとうございました。

ちなみにゴマの花と畑の写真は、岩手県二戸市の雑穀の神様とよばれる人の畑だ。この人についてはいずれ書こうと思っている。