幸せのピンクのハンカチをもらった。

2013年4月 7日 from イベント,首都圏

Anan

ふう、やっと原稿書き終わった。一息、ブログで入れることにしましょうね。

金曜日は料理研究家・ホールフードクッキングスクールのタカコナカムラさんの出版記念パーティーで、露払いの講演を頼まれた。ええっ俺でいいの?と思いつつ日頃の恩返しと思って引き受けた。なんつっても夫君である日高シェフにもお世話になってるからね。

タカコさんは、ホールフード(食材を丸ごと使う)という概念を提唱しつつ、素材をよりよく食べるための料理技法についても積極的な研究をしている人だ。塩麹や食材の50度洗い、乾物の活用や発酵食品など、ここ数年の料理界のトレンドをいち早く発信している。

僕は、日本の食をより佳いものにするためには、生活者が自分で料理をするという基本的なことを徹底しなければならないと思っているので、タカコさんの活動を陰ながら応援しているのだ。

タカコさんのパーティー、きっとたべもの業界の編集者さんとかが中心の会だろうと思って講演資料を用意していったら、タカコさんから「生産者さんやメーカーさんが多いのよ」と言われ愕然。なぬぅ、そんな方々に「日本の農業の現状は、、、」なんて話したって意味ないじゃん!と思いつつも、時間も無いので話をしました。

終わって、会場となった「アクアパッツァ」にてパーティー開始。料理に並ぼうとしたとき、どうみてもインドかネパールかバングラデシュあたりから来た方だなとおもわしきおじさんが僕の前に。写真のピンクのハンカチをもった手が僕の方に。ん?んんん?

「どうぞこれ、あげます。」

と、ざっくりした手触りのピンク色のハンカチをくれた。え?どういうことと眼を回していると、とても流ちょうな日本語で「あなたの講演、面白かった」と話してくれる。

「あのね、あなたは生産や流通の仕事をしてるのはわかったけど、料理はしますか?」

「はい、東京に居るときはかならず一日一回は料理してると思います」

「じゃあ最後に作ったもののは?」

「昨晩、自宅で豚肉とほうれん草の炒め物をしましたね。味噌汁は妻が作りました」

「素晴らしい!あのね、ある大学の研究で、人間の脳は料理をするときにとても活性化することがわかったんですよ。とくに盛りつけをするときが最大のピークになるんです。これ、料理する人を多くしたいなら、大事な研究ですよ」

うーむ この人、日本語がお上手とかそんなレベルではないな、日本に活動の拠点を置いて長く居る方だ。しかし、このハンカチは?と思いつつ、「あの、お名刺頂戴していいですか?」と訊くと、、、

「名刺なんてもってないよ!あのね、名刺は何で出来てますか?そう、紙。紙は何から出来る?日本以外の国の木を切って作ってるんですよ。これ、いいことじゃないでしょ?わたし、あなたにハンカチあげました。これ、忘れないでしょ?」

あ、本当だ! もう確実にあなたのこと忘れないです。

「このハンカチはインドのチャルカ(糸車)でつくったものですよ。ぜひこれを使って下さい」

そんなやりとりを横でみていたタカコさんが笑いながら、「やまけんさん、この方は鎌倉のアナンさん。うちやアクアパッツァで使ってるスパイスはアナンさんから買わせていただいてるの。」

ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?

アナンさんって、あの黄色いパッケージに入ったスパイスキットのアナンさん!?俺、藤沢での学生時代にも買ってたよ!

そう、あのアナンさんだったのです。

いやー 驚いた。そして、心の中で深く頭を垂れましたよ。この人は自分の言っていることと、行いをきちんと重ねていくという実践をしているんだなぁ。俺は、言ってることとやってることがまだぜんぜん重なっていないんだなぁ、と気づかされた。アナンさん、ありがとうございます。チャルカでつくった布のハンカチ、大切に使わせていただきます。

アナンさんだけじゃない、パーティーにはそうそうたる人たちがいた。中でも嬉しい驚きは、僕が高校時代、自由の森学園の学食でおやつに食べていた天然酵母のブドウパンを納品していた、味輝(みき)パンの若社長さんに会えたことだ。当時はホシノ酵母を使っていたが、いまではなんと麹や酵母を自分で作るところからやっているとのこと。今度見学させて欲しいとお願いしておいた。

佳い食は佳い人の輪がつくるものだね。先達の思いを後生に伝える輪に、僕も加わりたいと思います。