日本を代表する農産物の大産地・渥美半島の熱き一日半。キャベツとトマトとシラス天丼

2014年12月 7日 from 出張

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先週の木金と、愛知県の豊橋駅で降りて講演に向かうことになっていた。最近、スケジュール管理と講演依頼への対応もを部下に任せてしまっていて、前日になるまでの間にいちおうどこでどんな講演があるということはきいているはずなんだけど、すぐに忘れてしまう。だから、当日になって「はて今日はどこにいくんだっけ?」となることが多い。まさにこの日がそうだった。

豊橋で降りるんだから、豊橋近辺だろうと思ってのんきに豊橋カレーうどんを食べ、待ち合わせ時間までコーヒーでも飲むかと思っていたら「ヤマモト先生ですよね!?」と出迎えの方に声をかけられた。むこうも早く来すぎたのだという。

「よろしければ場所が遠いんで、出発しましょう」

え、遠いって、どの辺でしたっけ?

「今日は渥美半島の先端で講演して、泊まっていただきます」

ええええええええええええええええええええええ

渥美半島だったの!?しまった、到着駅で勝手にその近辺だと思ってた。愛知県の豊橋市から1時間半、渥美半島といえば全国でも有数のキャベツ・トマト・ブロッコリー、そして輪菊の産地である。そして僕にとっては思い出深い土地でもある。

というのは、前職で僕は野菜をネット上で卸売取引(いわゆるBtoB)する仕組みの立ち上げをしていた(そして僕の力不足ゆえ失敗した)のだが、その会社がもともと運営していたのは花卉(「かき」と読む。切り花や鉢花、観葉植物のことです。)の取引のシステムだった。そして、日本全国のキクのシェア3割を生産している渥美半島の生産者と農協が、大英断をして出荷してくれていたのだ。

その時代に一度渥美の産地に行ったことがあるが、それはもう遠い国なので、それきりになっていたのだ。今更ながら車中で驚きつつも、愉しみに講演会場に向かった。

夕刻からの講演は、集まった農業経営士さんたち170人に好評をもって迎えていただいた。終了後の懇親会で何人もの方が「俺はあの頃、あんたのいた会社に出荷してたんだよ」という方が話しに来てくれて、ジーンとなってしまった。本当にどうもありがとうございました。皆さんのおかげでいまの僕があります。

さてその翌日、朝から渥美半島を廻って代表的な作物の生産風景をみせていただくことにしていたのである。

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朝、日の出が見えるいい場所が15分ほどの場所にあるときいたので、6時15分頃に徒歩でホテルを出たが、岬特有の強い風に煽られながら登り勾配を歩けども歩けども着かない!どうやら15分は車での話し!?けっきょく40分ほどかかって日が昇ってから到着。

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往復1時間半で、岩場に降りるまでのアップダウンがまるで登山。いい運動になりすぎました。

さてまずはキャベツである。キャベツの県別出荷量・額ともに愛知県はトップである(二位は群馬、三位が千葉)。そして愛知県内のキャベツ出荷量の約半分となる55000トン(!)を生産し、焼く50億円の売上げを持っているのがこの渥美半島の田原市なのである。

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生産者さんの圃場に伺うと、出荷間際の玉がズラリ並んでいる。

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しかし台風が運んできたのか、黒腐れ病というのが出ていて、皆困っているということだった。ごらんの畑、外葉が茶色く枯れてしまっているが、これがそのあらわれだ。裏返すと根元が腐ってしまっているのがあるという。

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台風後に定植した苗はちゃんと育っているとのことなので、本当に少しの気象条件の違いで大きく結果に影響が出る。農業ほど予測できない産業はないのである。

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これを家に運び、選果して出荷先別に箱詰めする。この辺では市場出荷以外にも、他県の加工業者との契約取引があり、カット用だと市場向け出荷できない傷物(といってもそれほどの傷ではないのだが)も引き取ってくれる。農業は姿形のいいものと、そうでないものをすべて売り切って初めて利益が出てくるものなのである。とはいっても、最近スーパーや通販業者がやっている「不揃いもの、安く売ります」という仕組みは、いろいろと問題がある。それについてはまたどこかで書こう。

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「わたしは東京生まれなんですけど、もうねえ、うちの主人が脱サラして実家に戻るって言うとき、さんざん『農業はいいよ〜』って騙されました(笑)けどね、ほんとによかったです。環境も空気もたべものも、、、もう東京に戻ろうなんて思いません」

と奥様。この夫婦は上手くいってます(笑)

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お次の産地は、太平洋を望む場所にあるトマト農家さん。ミディトマトのシンディスイートをロックウール栽培している。

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ファーストトマトの栽培の話がききたかったのだが、はたして昔はファースト一辺倒だったそうだ。時代の変化でだんだんと桃太郎系の品種に変わってしまったが、「あの頃のファーストは旨かった」という、期待通りの言葉を聞けた。

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僕も学生時代にファーストパワーという品種を育てたことがあるが、下手だったので4段目くらいまでしか穫れず、その本来の味を識らないままである。

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あるときから新しいチャレンジをしようということで、桃太郎や桃太郎エイト、水切りしてのフルーツトマトなどさまざまなものを試したが、ミディ品種に落ち着いたという。土耕でやっていたが、生産効率を考えていまは水耕である。

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「条件に応じたECの管理をきちんとやっていれば、それなりの味はでる」

という、経営を重要視した選択だ。それを分かった上でやっているのは大ありだと思う。

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さてお昼ご飯。

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「鈴木屋」にてシラスの水揚げがあればシラス丼、なければシラス天丼という選択肢だが、大しけで漁がなかったので、シラス天丼である。

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でも、残念どころかこれが旨い!

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シラスを丸めて揚げたテンプラ、サクフワな食感に甘辛い丼タレがからみついて、白飯を誘う!

もともとは鰻屋だったのだが、資源枯渇もあるので新しいメニューをと言うことであみだしたのがシラス料理だという。

もうひとつこの店の自慢が「ライアン丼」。なんのこっちゃ!?これじつは野球を好きな人じゃないとわからない。ヤクルトスワローズの「和製ライアン」こと小川選手がこの辺出身で、この鈴木屋の息子さんが子供の頃、一緒のチームだったのだそうだ。

「いつもうちにきて、お肉ばっかり食べるんですけど、特に唐揚げが大好きで大量に食べるんですよ。それで、彼の好きなモノばかりのせた丼を作ったんです」

それがこれだ!

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手前にはヒレカツ味噌ダレ、そして奥に鶏の唐揚げが載っている。

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この唐揚げ、味噌風味なのがオリジナル。

大満足の昼食でありました、、、

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この産地巡りを通じて、まだまだ強い産地には力があるなあ、と思ったのである。

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また遊びに行きますね、渥美半島!