いま、もっとも美味しいジビエを食べさせる食肉集団エレゾの直営・紹介制レストラン、東京渋谷は松濤に現る!SNS等への投稿禁止の店だが、店主佐々木君の特別の許可により一挙掲載!その2

2016年8月 5日 from 食材,首都圏

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さて、お待たせしました。もうすでに興味ある人からの連絡が多くて、オフ会でもやるかという気になってきましたが、、、十勝の食肉集団・エレゾ社の東京での初めての直営レストランができた。それも、渋谷の松濤ど真ん中という好立地。

最初にお断りしておきますが、このレストランは紹介制です。といっても、エレゾ社と取引のある方や、札幌の「カマラード・サッポロ」に来店したことがある人は紹介がなくてもOK。

また、SNSやブログなどでの店舗の写真公表はNG。私は深い事情があって(笑)OKとなっております。って、エレゾ社のWebをみればその理由はわかるかもしれませんが。

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向こう側に見えるのが松濤公園で、ちょうど三つ叉の中州的な場所にあるこの一軒家がエレゾ・ハウスとなる。

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店内は1F、2Fに別れており、部屋数で言えば4つの空間が用意されている。メインダイニングは1Fのこの空間。

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Nikon D800+SIGMA 20mmf1.4

写真では7席だが、8席まで増やせるという。この奥に、庭が見える開放的な一部屋がある。

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二階には10人以上はいれる余裕のある個室がひとつ。それにしてもすんごい雰囲気!

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その横には、シガールームが!

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D800+24-70mmf2.8

さて、誰が料理するの?って話しなんだけど、正直驚きました。だって、社長の佐々木章太自身がこれにあたるというんだから!

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ちなみに佐々木くんは、帯広の人気レストラン「エレ」の次男坊。店を継ぐものと思って料理専門学校に行き、その後、軽井沢の星のリゾートに就職、レストラン部門で腕を磨きつつ、空いた時間に軽井沢の別の店に武者修行に行く。その後、ビストロ・ド・ラ・シテの厨房に入り、しごきにしごかれる。次はフランスと思っていたら帯広から呼び戻され、覚悟を決めて帰り厨房に。

そこで、猟師さんと運命の出会いを果たしてジビエの道に入るのだが、その辺の詳しい話しは数号前の「専門料理」でインタビューを書いているので、そちらをご覧下さい。

ということで何が言いたいかというと、彼は「料理人が肉屋になった」人なんですね。だから、彼が料理するというのは実に自然な成り行きなのであります。

それでは、夜のコースの中身をみていきましょう(値段とかはelezoのWebで確認して下され)。

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D800+TAMRON90mmf2.8Macro

一皿目はコンソメ。これ、もちろんエゾジカのコンソメです。

このコンソメがじつにクリア!

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シカのコンソメ?って思う人はまずここでのんでみるといいと思う。実に上品な仕上がり。トリュフとの相性抜群。

そして、ビックリするのがこのブーダンノワール。

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じつはこのブーダンの血、豚ではなくて、エゾシカの血なのだ!

「シカの血、すごくきれいな風味なんですよ」」

と佐々木君が言うとおり、とてもスッキリした、それでいてうま味を十二分に湛えた味わい。スプーンの下にしいてあるリンゴのモスタルダ(かな)によって爽やかさがプラスされる。よくある豚の血を使ったブーダンが苦手な人は、これ食べたらきっと宗旨替えすることになると思うゾ!

次の皿には、ちょっとビックリ。魚介なのですよ。

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野菜のムースの上に北海道のウニをたっぷり乗せ、その上からシカのコンソメジュレをかけてあるのだけども、、、

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このコンソメがなんとウニと合うことよ!

「できるだけ北海道産の食材を使っていきたいと思ってますので!」

うん、それがいい。じつは佐々木君の奥様(可愛い!)のお父さんは、北海道の某農協の組合長だという!なので、これはまあメンツにかけてもいい材料が使われるわけですよ(笑)

さてこの辺から、エレゾが誇るシャルキュトリー祭りになってくるのだけれども。加工肉、テリーヌとかって、それ単体で食べるとすぐにお腹いっぱい、イヤになっちゃう。ワインバルみたいなとこでよくパテドカンパーニュが出てくるけど、ほんの一口でイナフなんだよね。と思ってた。

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でもこの店では、ご覧の通り、シャルキュトリーが単体で出てくるということはない!より肉が美味しくなるガルニがきっちりと考えられているのだ。いやもちろんシャルキュトリの完成度も高いから成り立つんだけどね。

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ご覧のパテ、シカやカモ、豚などさまざまなジビエ肉が横断的に使われている。そのすべてが自分たちが狩ってきたものなのだから、ほんとうに「一から造った」といえるのは彼らのごとき業態なのだと思う。

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ちなみに野菜やシカの舌(!)も加えられたこのパテ、素晴らしく美味しいです。

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北海道どいえば、のアスパラの一皿。ただ、これを撮影したのは6月なので、時期によっては内容は変わるので悪しからず。ちなみに乗っている生ハムはイノシシ。野趣溢れる濃厚な香り、素晴らしい!フォアグラを噛ませたパテも、シカの足の肉をそぼろ状にワインで煮込んだもの(だったともうけど)で、日本の牛しぐれ煮を思い起こさせる。フォアグラの油脂と一緒になると、なんともリッチ!

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ちなみにこの間、佐々木君は厨房で頑張ってます。ジュージュー音も聞こえます。なにやってるのかは、後でわかるんだけど、、、

でました、エレゾのアイデンティティの一つではないかと思う一品、アンデュイエット!

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豚の内臓を豚腸にいれて寝かせたアンデュイエットは臭いもの、と思ってこれを食べると、その透明感のあるモツの味に驚くかもしれない。うま味は濃厚、もちろんモツのあの香りがないわけじゃない。でも、苦手な人もきっと食べられるレベルにうまくもっていっている!

そしていよいよクライマックスを迎えます。

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解説は無用でしょう。彼らが扱う代表的なジビエであるエゾジカのロティ。ジュージューはこの音だったのですね。これをみて「なんだシカかぁ」と思った人、あなたが想像してるのとは違うと思います。

実は俺も鹿肉はもう飽きてるんですね、はっきりいうと。鹿の肉って、イノシシやクマ、アナグマやカモなどと比べると、どうしても起伏が少なくて退屈。うまみも単調だ。そうおもっていた。

しかし、エレゾで獲るシカは、年齢や性別を制限し、かつそれぞれの肉にあった処理をした後、熟成をかける。今回の二ピースの鹿肉は、奥が2歳のメス、手前が4歳のメスだ。その食感たるや、まるでビロードの高級絨毯を歩いているような噛み心地!ごりごりした食感は一切無く、歯が肉を切り裂く食感がここまで快楽なのか、と驚いてしまう。

2歳のシカはアッサリ、しゃっきりした味わい。4歳のシカはやはり深みがあって弾力も楽しめる。美味しい! しかも、けっこうなポーションなのに胃にまったくもたれない。

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もちろんソムリエ君がいるので、各料理にペアリングしてと頼めば、よきチョイスでワインも愉しめます。

いや、マイッタね。いつもはあまり食べないうちの嫁さんも、ちゃんと最後のシカまで食べることができていた。量的には死ぬほど満足。けど、胃にもたれることはない。ジビエは野趣溢れるものとだけ思っていたら、そのスッキリ上品な味わいに驚くこと間違いないと思う。

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もちろんここで紹介した料理は6月プレオープン時点のものなので、時期により内容は変わっていくと考えて欲しい。

「ぜひ行きたい!」というひとは、ぜひエレゾに連なる人を見つけて、紹介してもらってください。申し訳ないけど、僕に関して言うと、まだ会ったこともない人の紹介はできかねますので悪しからず。

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それにしても、エレゾのような食肉加工集団が今後、本州でも増えることを祈る。というのは、北海道よりも本州でのシカ・イノシシ・サルの獣害が農業に与える被害が大きいからだ。

でも、残念ながら僕はまだ、本州または九州四国でエレゾ同様の取り組みを、エレゾと同レベルでこなす人に出会ったことがない。

獣害駆除の肉をジビエとして美味しく食べよう!というかけ声は、全国的にあがっている。しかし、処理場が少なく、猟師がそこにアクセスする前に適切な処理がなされず、また処理場でも解体後に十分な熟成をしないうちに冷凍にかけてしまったりすることが多い。そんな肉は、硬くて臭くて、とても食べられたものではない。ジビエではなくケモノ肉だ。

運悪くそんなケモノ肉を食べてしまった人は「ああ、ジビエってやっぱりこんなもんなんだ」と思ってしまうだろう。それがいちばんの日本の損失であると思う。まず、ジビエ業界関係者はここで食べてみるといいのではないかと思うよ。

佐々木君も頑張ってね!