雪室にねかせたジャガイモは甘くなる。それを人為的に、しかもおよそ20種もの多品種で管理し、馬鈴薯の研究者でさえも唸らせてしまう第一人者が村上農場だ。最近ようやく熟成ジャガイモというのが識られてきたし、後を追うものも増えてきたが、これを世にきちんとした形で出したのは断固として村上農場であると言っておく。村上夫妻をイ・ルンガの堀江純一郎シェフに紹介してもらってから、ありがたいことに毎年交流が続いている。
その村上農場でここしばらく力を入れていたのがトウモロコシで、いま流行のウルトラスーパースイート種ばかりではなく、キャンベラなどのちょっと前の品種を出すなど、通にはタマラナイ品種選定をしてくれていた。
しかし、それ以上に驚くのが、村上智華さんによる「うちの野菜をどうやって食べたらいちばん美味しくなるか」の追求だ。村上農場は一般消費者向けの販売より、圧倒的に全国のシェフや理解のある小売店への販売が多い。そこで彼女が大切にしているのが、村上農場の野菜を美味しく食べるためのレシピ提供だ。
それも、彼女の性格上、とことんつきつめて毎日のように実験をして、納得いったものを開陳する。今回はトウモロコシだ。
私達の農場では、とうもろこしを茹でる際、パスタを茹でる塩分濃度のお湯で30?35分、落し蓋をしてぐらぐら茹でて頂く様にお願いしています。
30分を越える辺りで、一気に甘い香りが漂い始めます。
これが芯まで火が入った証拠。
芯からグルタミン酸たっぷりの出汁が流れますが、粒はしっかりと皮に守られていますので、味の流失はありません。ここで、誰もが気が付かない青臭みが抜け、とうもろこしの味は劇的に変わります。
熱が引いて冷えた頃、粒の隙間にあった余分な茹で汁が芯に吸われて、塩気が引きます。
ここで、ようやく食べ頃。
料理としての茹でとうもろこしの完成です。
な、なぬぅ~~~~
強めの塩加減で30分茹でる!?
注意点がもう一つあって、茹でた後は立て掛ける様に斜め置きして、余計な水分(塩分)を落とすのがコツです。 茹でて4,5時間置くと美味しくなりますよ。 そして、残念ながら、今期は昨日で収穫終了です。
ちなみに茹で上がったらラップしておいとくのと、しないでおいとくので味が変わるそうだ。うちはラップしておいといた。やってみて驚愕、マジで旨い!
生っぽいトウモロコシの粒が「プシッ」と破裂するような食感はなくなるものの、プチッと感はちゃんとあり、その分味わいがしっかリ強めに感じられるのだ。しかも、昔ながらのもちきび(フリントコーン)に感じられるような、トウモロコシらしい香りが強くなっているような気がする。長く茹でた方が、こうなるんだ!驚きました。
しかももう一つ、彼女の提案がすばらしい。トウモロコシの芯を茹でると香りや味わいが湯に移るというのはここしばらくでかなり世間に浸透したと思うが、その茹で汁でパスタを茹でて、トウモロコシのうま味と香りをまとったパスタをアーリオ・オーリオにするのが旨いんだと。
やらなきゃ!
トウモロコシはあらかじめ包丁で削いでおく。もったいないから極限まで削ぎます。まだ甘い汁がしたたっている芯をポキポキと折って、前夜にトウモロコシを二本茹でた汁に足す「追い芯」なんていわないか、をして、さらに芯の味を煮出しておく。その汁でパスタを茹で始める。
ニンニクと山形県のトウガラシをオリーブオイルであたためて、我が家定番のジャコ少々を入れて、しばらく炒めてから生のコーンを。グランパダーノをほんの少しだけ振りました。
トウモロコシ二本分を贅沢に使ったので、麺よりトウモロコシのほうが多い!?
このパスタが、超絶に旨い!
トウモロコシのブロードと塩だけでも十分うま味が出ている!もしかしたらジャコはいらなかったかもしれない。いやー、トウモロコシの美味しさをこんなに味わえるパスタは初めて食べました。
30分茹でしてあら熱がなくなるまでおいといたトウモロコシも、本当に美味しい。
惜しむらくは、これを識ったのがトウモロコシシーズン終了となるいまだと言うこと(涙) 来年のシーズンは毎週これをやりたいと思います。
村上農場も先日の十勝を襲った台風で圃場に被害が出た。今年のジャガイモ、どうだろうか。きっと彼女たちならリカバーして素晴らしいものを出してくれるだろう。楽しみにしています。
■村上農場
http://imomame.jp/
これからはカボチャだそうです!
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