この冬初めてのジビエ・野鴨を三浦で味わった!ゴージャスリッチコースとうたた寝

2004年11月25日 from

 さて先日のトリュフ獲りの後、戦果を携えてフレンチレストラン「シエラザード」を訪れたのである。店の詳細については過去ログご参照
まだ開店前だったのにシェフが迎え入れてくれる。彼もトリュフに興味津々だったのだ。そこからの顛末は先日のトリュフ編のとおり。

「で、どうする?軽くつまんでく?」

という伊崎シェフの声にまんまと載ってしまった。実際には「軽くつまんでく」なんてレベルではなかったのダ!

「今日、ヤマケンが来るって言うから野鴨を仕入れてるんだよ。うちも今年初めてだね。どう?」

なにぃいいいい
ジビエ好きの僕にそれはないだろう、、、
本当は長島君と、この後に別の店に行こうと思っていたのだ。しかしこれはどうしたものか。
しばし悩む僕を尻目に、シェフがまたなにやら取り出してくる。

「北海道から牡蠣が入ったよ~。少し出すね」

と言ってカシャカシャと牡蠣包丁で殻を空け、氷の上に盛って出された牡蠣が超美人。

これに、鷹の爪の輪切りを漬けた赤ワインビネガーを垂らして啜りこむ。

ツルリと喉に送られる牡蠣は海のミルクの異名通りのなめらかさとコクだ!それが鷹の爪のピリッという刺激とビネガーの酸で引き締まり、食欲を最大限に喚起させてしまった!

「うまいじゃん~ こまるよこんなの」

「でしょ? じゃあ、蟹でも食べる?」

と、ズワイガニをいきなり丸茹でしだす。

「全然フレンチじゃないけどねぇ(笑)」

といいながら、蟹の丸茹でにアイオリソースが付いてくる!

殻を剥いてみると、蟹ミソがミッシリと詰まって、その周りのプルプル質も旨そうである!

この蟹ミソにアイオリソースを混ぜる。

アイオリはマヨネーズの原型で、ニンニクを磨り潰し卵黄と油でソースにしたものだ。蟹ミソその磯の風味と塩気を、ニンニク風味のアイオリの油脂分が包み込み、なんともいえない快楽物質に変容する!

「アイオリ、うめぇー!」

「旨いよね、ようするにニンニクマヨネーズだけどね。」

こいつを蟹の身にもつけてむさぼり食う。

旨いに決まってるのである。10分ほど、勝美君と僕は無言。残骸をちらばらせて、まったくここはフレンチらしからぬ空間になってしまった。

続いて運ばれてきたパテもしみじみと旨い。油分が効いてる方が旨いんだよな、カロリーは高いけど、、、フレンチでしかパテは食べないけど、なにか美学を感じるのだ。

厨房の覗いてみると、フライパンになにやら載っている。

「サザエをエスカルゴ風に焼くとね、エスカルゴより旨いんだよ。」

と、新鮮なサザエにニンニクパセリバターを仕込んだのを、上火でジュッと焼き出す。

ジュワジュワとパセリバターが泡立つサザエをほじくって食べる。歯応えの強いサザエは旨味成分もたっぷり含んでいて、パセリバターと合う!

しかもこのサザエの肝の部分がまた、濃厚な旨味とほろ苦さで、胃液を分泌させまくるのだ!

「旨いなぁ、、、旨いよ。 あれっ なにつくってんの?」

と厨房を観ると、シノワで鳥のガラから出た旨味を漉している。

「鴨のソースだよ。これが出来るまでの時間を稼いでいるわけだよ。」

ということで、もう鴨を食うことになっているのであった!

「はい、この料理、ホタテに火が生ぬるい状態で入っている微妙な加減の一皿。」


フランス語で「生ぬるい」という意味ティエード(tiede)という料理!ホタテには本当に微妙な熱が通されている。そのおかげで生の状態より遙かに旨味が増している!ソースはレモンピールならぬ柚子ピールの入った爽やかなバタークリームソースという感じで、可愛らしく軽やかだ。

次ぎに出てきたのがブイヤベース風の魚の煮込み。魚の名前はワスレタ。

この魚、ホロリと身が崩れ、ネットリゼラチン質も含んでいて旨い。ブイヤベースに合う魚だ。

「具材は長島農園の里芋と西洋カブだよ!今年の里芋は絶品の旨さだね。カブも力強い味でイケル。」

とシェフが言うとおり、里芋のネッチョリ感は最高、旨味も強い。カブは勝美君によれば『気候的に最悪の出来の年』にも関わらず、評判は高いという。

この間マダムも加わりワイワイとやる。と、厨房の奥に見慣れない黒いモノリス状の物体が、、、

「釜浅で、炭火焼き機を買ったのよぉ。そしたら思ってたより大きくて大変なのよぉ。」

という巨大炭焼き鉄台であった。鴨はフライパンで焼いてオーブンに入れるのがよく観る焼き方だろうが、炭火焼きはまた野趣溢れる味になる。なんといっても脂が垂れて炭火で燃え、その煙が鴨にかかることで、絶妙な燻し香がつくのだ。

「バードコートさんみたいな突き詰めた焼き方はできないけどね、でも炭火の方が旨いからねぇ!」

と、伊崎シェフはご満悦だ。そうだろうな、炭火で肉を焼くのは本当に楽しい。シェフも絶対に楽しいはずだ。

「はい、今年初めての野鴨!」

うおおおお
うまそうだよぉおおおおおおおお

濃い血の色の肉にかぶりつくと鴨のジューシーな脂が舌に落ち、途端に炭火の燻し香が立ち上る。中心部がほんのり温かい状態に焼かれた鴨肉は、まだこの時期の鴨はアッサリ目なんじゃないかという予想を嬉しく裏切って、濃厚!

手羽の部分には蟹に引き続き、手でかぶりつく!ブロイラーでは感じ得ない歯応えと野趣溢れるゴツゴツとした旨味!もう最高である。

「まだこれも食べてよ~」

出たっ!砂肝&レバー&ハツである。レバーはほろ苦みが強く、赤ワインとガシッと組み合う。ハツが出色の出来で、フニフニという絶妙に官能的な食感だ。砂肝は、これが砂肝か?と思うくらいの上品な歯触りと旨味。ちとこれは感動した。

ふっと一息。最後にデザートでブラマンジェが出てくるが、何気なくたべてビックリ!すぐさまとろけてしまう柔らかさだ!

「ゼラチン濃度をギリギリまで低くしているから、舌の上で溶けるんだよね。クリームソースも皿も冷やして出すと、みんなビックリするよ。」

うーむ
今回はかなり楽しめたなぁ、、、前菜からデザートまで、トリュフを含めて趣向たっぷりの素晴らしい一時だった。

「あのね、ヤマケンさんのWebのおかげで、『じゃらん』が取材に来たのよ。特集コース組んでくれたみたい。これでお客さんが沢山いらしたら、ヤマケンには何か御礼するわよ!」

まじ?まじっすか?
ということで、横須賀近辺の皆様、ぜひシエラザードに足をお運びください。ジビエや各種素材は前もって相談しておくのが吉。気まぐれシェフ&マダムだからね。長島農園の野菜はほぼ常に使っているし、新鮮な三浦の海の幸がある。そしてこれからはジビエの季節だ!予算をあらかじめ伝えれば、伊崎シェフが色々と考えてくれるはずだからご安心。料理に赤、白ワインを飲んでも、都心のフレンチから比べると全然リーズナブルな価格になるのだ!

トリュフオムレツも食って、こんなに食べて、かなりご満悦になった僕と別れ際、勝美君が笑いながらささやく。

「やまけん、そのうちここも耕作放棄地が沢山出てくるんだから。そしたらうちの近くに農地買いなよ!」

そうだな、それもよい。こうやって全国に住みたい土地候補ができていくのであった、、、