米国のオーガニック事情の近況とローカルフードの進展

2006年3月 9日 from 食べ物の本

僕の農業関連の盟友で、これまでも数回このブログで紹介した「のざけん」というヤツがいる。愛媛大学の法文学部の助教授を務めるのざけんは、全国の先進農家とつながっているネットファーマーである。

そののざけんが昨年、アメリカに研究遊学に行っていた時期があった。

「やまけん、こっちはおもろいぞ。アメリカの消費者の食べ物に対する感覚の変化が肌で分かる」

と言っていたのだが、その”変化”がナニモノであるのかまでは思い至ってなかった。しかし先日、彼から送られてきた本にその答えが載っていたのだ。

■はじめてなのになつかしい 畑カフェ 田んぼレストラン
http://www.ruralnet.or.jp/zoukan/index.html

この本の後半も後半に、のざけんが寄稿をしているのだ。

~オーガニックからローカルへ!~
「社会運動化するアメリカのローカル・フード運動」
愛媛大学法文学部助教授 野崎賢也

「やまけん、アメリカではもうオーガニックは潮流として後退している気がする。代わりに、地縁的に食を成り立たせる”ローカル”っていう言葉がキーになってきているんや」

と彼は言うのだ。興奮して、貪り読んでしまった。

日本の新聞報道などでは、アメリカという巨大な国についての一側面しか漏れきこえてこない。食事情についてもそうだ。すでに階層化されているアメリカの食文化は、意識が高い層と低い層とでかなり開きがあるものの、その大部分が「崩れている」というイメージが強い。しかしそれもまたステレオタイプというか、一様ではないのだ。

野崎によれば、実はアメリカで現在、食に関する意識は非常に高まり、大規模なアグリビジネスではなく、地域に根ざした食のあり方「ローカルフード」を求める社会的な動きが強まっているそうだ。

「個人的な実感だが、アメリカにくらべて、日本のインテリ層・中上流層の食への感心や意識は低いと言えるだろう」

「日本の地産地消のようすを見ていると、こうした日本の食と農の現状の何が問題で、それをこうすればよくなるから地産地消を進める、という現状の批判的分析、つまり土台となる出発点がかけているように思えてならない」
(どちらも本文より引用)

という最後の段落のテーゼは刺激的だ。
アメリカの現状(の一側面かもしれないが)を知りたい人はぜひ読んでみると佳いだろう。東京近辺にいる方なら、大手町のJAビル地下にある農文協直営の書店で買えるはずだ。ちなみに全く関係ないけど、JAビル地下街の入口にある酒販店「永楽」では、「うそっ!」と声を出すほどに素晴らしい純米酒の品揃えがある。竹鶴も扶桑鶴もるみ子の酒もなんでもあるワンダーランドである。JAビルは近いうちに移転するらしいので、今のうちにぜひ足を運ぶといいだろう。

話は戻るがこののざけんこと野崎は、しばらく前から独自の方法で食育に関する研究を行っている。
今後、食や農、地域といった話題の中で、もっと必要とされる人間であることは間違いないと思う。