俺、心の底から感動しちゃったよ。岐阜市の市役所の裏にある「三河亭」は、全部てづくりの正しき洋食。決してコストパフォーマンスなどという陳腐な言葉を使ってはならない、まっとうなお味だった。

2012年9月 6日 from

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■撮影 OM-D+12-50mm

本日は岐阜市で開催された、食による地域興しのシンポジウムに、基調講演とパネルディスカッションとで参加してました。基調講演中、ウィルコムのPHSがブンブン鳴る。ちらっと見ると会社からだ。うーん、これはきっと俺お得意のダブルブッキングが発覚したのだな、と思ったらまことにそうだった。本日5日、関西方面から出てきている某氏と会社で会う予定だったのでした。初顔合わせなのに、、、ゴメンナサイ。しょぼーん、、、

シンポに事例として参加してくれたのが、B1グランプリにも出場した「めいほう鶏ちゃん研究会」の小池さんと、「羽島れんこん友の会」の馬場さん。

鶏ちゃんは僕も大・大・大好きな地域食なので、お会いできて本当に嬉しかった。しかも息子さんが僕の大学の後輩(年は離れているが)で、しかも就職したのが僕の古巣の深紅ダンクだという。これも縁でありますな。次回、かならず郡上で鶏ちゃん食べに行きますという話をしてお別れした。

れんこん友の会についてはまったく識らなかったのだけれども、岐阜の羽島市はレンコンの産地で、しかもこの地ならではの長〜く伸びるレンコン在来種があるのだそうだ。それを生かした創作料理を、何店かの飲食店が出している。中心人物の馬場さんのやる気がものすごくて、僕はこれを「宗教型求心力」と評した(笑)。ここもいずれぜひ足を運んでみたいと思う。

さて本題だ。

無事に会が終了し、さあ帰りましょということに。実は懇親会が開催されたので、そこでメシは終了だなと思っていたのだが、簡単な茶話会のようなもので、サンドイッチとお茶という程度だったのだ。

じゃー 岐阜市のうまいもんを食べに出るか! もう先週から休みなしでつかれちまったし、今日なんかダブルブッキングで迷惑かけたし(涙)。幸いなことに以前、お茶のことをいろいろ勉強しているときに仲良くなったT橋女史あらため姓が変わってM月女史が、Facebookで「岐阜市に来るならこことこことここがいいですよ!」と地域食の店を教えてくれていたのだ。

一店は「丸デブ総本店」のラーメン。もう一店が「更級そば」の冷やしタヌキ。しかしこのどちらも、18時には店を閉めているので×。残るもう一店が洋食の「三河亭」。ここの「高等ライス」が実に佳い味出してるというのだ。よっしゃ、行きましょう。

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ランチ時にはものすごい混むらしいが、あと30分でラストオーダーというタイミングのせいか、僕だけしかお客が居なかった。いくつか経験している、地方の古い洋食屋さんそのものの構え。

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メニューはこんな感じ。地方の洋食店にしてはちょっと高めの設定かな、と思った。この時点では、ね、、、

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やはり「高等ライス」は関心をそそる。裏面を観ると写真あり!

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なぬ!?高等ライスはどんぶりに入っていて、上に綺麗な目玉焼き?どうやらカレーソースかドミグラスソースのようなものがご飯にかかって、その上に目玉焼きが乗っているらしい。ちきしょう、下勉強してくるんだった。

ちなみに僕が、店を丹念に下調べしてから食べに行くと思っている人が居るようだけど、ぜんぜんそんなことありません。むしろ出会いのおもしろさが好きだから、あまり調べないんです。

で、これが夕食になるからがっちり行こうと思って、高等ライスとチキンカツハヤシをお願いする。チキンカツハヤシというとご飯ものに聞こえるが、単品で頼むとチキンカツの上にハヤシソースがかかったものになるようだ。青年がオーダーを聞き、厨房につと入り、カチャカチャ、ジュワーという音がし出す。しばしの後、料理来る!

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おおおっ 美しい! 端正とはこのことをいうのか、という美学を感じるミニマムな佇まいだ。

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濃厚なハヤシソースがかかっているのかと思ったら、意外にライトに赤いケチャップベースっぽいハヤシソースがかかっているチキンカツ。でもまずはどんぶりのふたを開けてみよう。

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三河亭の名入りの蓋が渋い、丸っこくて可愛いどんぶり。可愛いというのは、大きさもだ。実はスケールがわかりにくいだろうが、どんぶりもカツの皿もどちらも、それほど大判ではない。つまり、料理も上品サイズである。

ゴメンね、本音をいうと料理が来た瞬間に心の中で「小さいよ!」と思ってしまった。これで高等ライス800円にチキンカツハヤシが950円かぁ、と。

しかし、このふと心を横切ったつまらない所感が、あとでまったく反対方向へと裏切られるのであります。

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どんぶりの蓋を開けると、焼き色のついていない、やんわりと火を入れたのであろう綺麗な目玉焼きが、茶褐色のルーの海の上に浮いている。

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どうやらこの目玉焼きの下の海はカレールーのようであります。一口いただいてみる。

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うーん! これは実にまろやか&マイルド!洋食屋さんが丹念にルーを炒めて作った優しい味のカレーだ。突出したスパイスはなにもなく、ただ円のように丸い印象。穏やかなカレーだなぁ。そこで、目玉焼きを崩してみる。

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黄身が混ざることによって、味わいはもっともっとマイルド方向へと引っ張られる。うん、本当にまろやかなカレーなんです。塩味が絶妙なギリギリ加減で、やや弱めなこともあって、優しい食味に感じるのだ。物足りないと思う若者は当然居ると思う。が、これは上質。

この辺でチキンカツへと進む。これまた小ぶりなカツ。モモ肉一枚分がドカンと乗っているのかと思っていたのだが、このサイズと形は胸肉?

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はい、胸肉でした。従ってあっさりした味わい。パン粉は実に細かい粒状のものがびっちりと隙間無くついて居て、これまた微細な食感。鶏胸肉は火入れを誤るととたんにバサッとなってしまうけれども、絶妙なタイミングで揚げてある。

そしてその上にかかっているハヤシソースだが、これはもうみたままのケチャップベースの味わい。けれども美味しいです。カツの衣からしみ出した透明な油をなめてみるが、酸化してません。クリアで上品な油です。

いや〜、ここまで食べてきて、俺は居住まいをただそうかと思った。実に折り目正しい、上質な洋食なのだ。最初、ドカ盛りばかり経験しているせいか「値段のわりに少ないなぁ」と思ったが、これは認識を改めなければならない。仕事が実に丁寧なのである。カレーは完全にオリジナルだし、揚げ物もきっちりお金がかかった仕事をしている。この価格は完全に妥当なのだ。

と、思いながら食べ進んでいくうちに、さらなる驚愕が待っていた!

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ソース、なのだ!千切りキャベツをそのまま食べるわけにゃ行かないなと思い、ソース瓶を傾ける。あれ、うまく出ないや。ガラスの蓋部をとって隙間を空けて、チョイチョイと振ってキャベツにかける。あーあなんだよちゃんと手入れしといてくれよと思いながらソースのかかったキャベツを口に運ぶ、、、

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なんだこりゃ!?

なんともいえないソースの味わい!味の濃さではなく香りと酸味に特徴があって、口に入れた瞬間にちょっとした衝撃を感じる!

ええっ こんなソース味わったことないよ!?

もしやと思い、高等ライスにソースをツーと「の」の字にかけて混ぜ混ぜして食べて見る。おおおっ 味と香りに立体感が出てきた!いきなり3Dメガネかけたときのようにぐーんと味わいが立ってくる!

夢中になって食べ終わった。うーんと一息ついて、「美味しかった」と漏らすと、のれんの向こうから青年が出てきて「ありがとうございます!」と嬉しそうに言う。

「あのさ、このソース、すごく特別な香りと味がしたんだけど、これって、、、」

と言い終わらぬうちに

「自家製ソースなんです!」

と。

自家製!? マジ? いまどき、とんかつの名店だって完全なる自家製ソースは作ってないのが普通だぜ!?でも確かにものすんごく初めてのフレーバーで、かけるものを選ぶような味のソースだったのは確かだ。いやビックリした。

青年はやはりここの跡継ぎだそうだが「まだまだですけど」とのこと。なんとこの三河亭、100年の歴史があるのだそうだ!

そうか、、、この店は誇り高き手造り洋食の店なのだ。すべてお客さんに出すものは店の手がかかっているものばかり。業務用のできあいソースや下ごしらえ済みのものなど一切使わない店なのだ。

ああっ俺はアホか!この店の適正単価を「盛りが少ない」だなんて! と自分を責める俺である。

「この店で他にどんなものがお薦めなんですか?」と尋ねるも、若き青年、「うーんそうですね、、、」と逡巡。そういえばハヤシライスは今回のチキンカツハヤシにのっていたソースなんですよね?と問うと、違うという。

「チキンカツハヤシにのせたのは本当にすぐできるソースでして、ハヤシライス用は全く違うんです。」

えっ そうなの!? じゃー次回はそれいこう。次回?それっていつだ?俺の人生、一食一会だぜ!?

「じゃー ハヤシライスを追加でお願いします」

「はっ、はい!」

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来たぁあああああああああああああ!

濃厚にテラテラと照り輝くテクスチャ!その鈍い光の反射具合に、ドミソースのねっとり感を感じる。

、、、これ、頼んで佳かった!

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実に美味しい!

かなりこんがり目に炒めたのであろう小麦粉のルーは、しかし焦げ風味の手前でほどよく火入れをやめているのだろう、こうばしさが適度である。そして、よくあるトマト風味に逃げるのではなく、ごく控えめにペーストを使っているのか、渋い仕上げ。ルーの味とブイヨンのうま味が前面に出た、これぞ正統派洋食のハヤシである!口内でのったりまったりとまとわりつくハヤシのうま味、素晴らしい!

いやー 感動しちゃった。

つまり、この店とその辺にあるつまんない店との違いは、徹底して味のベースから自分の店で仕込んでいるかどうか、と言うことなんだと思う。そう考えるとこの単価は安い。改めて一皿の値段というものに感じ入った体験だった。

今度この店に来たときには、自家製ソースをかけて食べるフライ類をいただこうと思う。でもこのハヤシはまた頼んじゃうな、きっと。それほどに美味しかった。

ああ、いままた食いたい。ごちそうさまでした!M月ちゃん、教えてくれてありがとう!