仙台名物・余目の曲がりネギを愉しむ! 曲がってることは佳いことだ! この地の土質の制約があったからこそできた伝統野菜を大切にして欲しい。

2016年9月21日 from お取り寄せ,食材

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宮城県は仙台名物、といえば牛タンと言われるかも知れないが、野菜でいえばこれから寒くなると出てくるセリに加えて、この曲がりネギだろう。といっても、仙台の人も「見かけるけど買わないよ」という人もいるらしいが、その一方で「やっぱりこれよね」という方もいるという、実に評価の分かれるネギである。

いったいどんなネギかというと、これはもう見ればすぐにわかる。曲がったネギ。だから曲がりネギ。でもいったいなんで曲がってるの!?

 

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ということだが、これは頭を働かせればわかるはず。立性の植物の茎葉は、おおむね太陽の光に向かって伸びようとする。だから、ネギの生育のある時点で掘り出して、寝かせて植えなおせばこうやった曲がっていく。この辺は、アスパラガスを冷蔵庫で寝かせておくと、上に向かって伸びてしまうため、ぐにゃっと曲がることで知っている人もいるだろう。ちなみにアスパラガスとネギは近縁関係です。

この曲がりネギ、9月あたりからそろそろと出荷がはじまり、10月から鍋物の美味しい時期にかけて最盛期となる。その頃の仙台市内のスーパーでは、こんな売り場が建つこともある。

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やややっ なんか変なコーナーが、、、と思って近寄ってみると!

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曲がりネギ、、、

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ほうら、こんな風にかなりのスペースをとっている(笑)! いや、真っ直ぐでないから、スペースは否が応でもとらざるをえないのだ。

ところで、まだ根本的な問いがある。そもそも、なんで曲げる必要があるの!? そこにはどうやらこのネギが生まれた余目地区の土質に答えがあるらしい。

ということで、実際の曲がりネギ産地に行って参りました。

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圃場に着いたが、目の前には普通のネギ畑が拡がっている。東日本なので、分げつしない一本ネギに土寄せをして、太陽の光にあてないようにして、軟白させている。

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どうということはない、普通の栽培のようにみえる。

みえる、、、

みえるんですけどね。

「じゃあ、掘ってみますね~!」

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あららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららっ!?

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見事に曲がってるよ、オイっ!

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そう、つまりこの圃場は、曲がりネギの植え付け直しをした後の仕上げの段階だったというわけだ。

ネギは実に強い植物で、植え替えを何回しても不死鳥のごとく甦ってくる生命力をもっている。だから、一度や二度植え替えてもまったく問題なく育ってくれるのだが、それにしてもこの曲がりネギは面白い。

「こちらが、育ってるネギを一度引き抜いて、植え直した圃場です。」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

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寝てるじゃないかあああっ!

実はこの植え替え時、地面にぺたんと180度の角度に寝かせてしまうわけではない。30度という微妙な角度をつけて寝かせ、土をかけていくのだそうだ。30度っていったいどんな理由!?と思ったのだが、これは経験則なのだろう。

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なぜこんなことをするのか。

いろいろ言われているのだが、この地域では地下水位が高く、長くのびる根菜類の栽培は不得手だったそうだ。長ネギは軟白させるために土をかけなければならないが、ある程度の長さに到達させたいと思っても、地下水位が邪魔をしてしまうらしい。

そこで、ある程度育った段階で引き抜き、30度の角度に植え付け直して土をかぶせるという技法が産まれた。これならばネギは対角上に弧を描いて伸びていくので、深さは必要がなくなるわけだ。

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「しかもですね、曲げることでネギにストレスがかかって、柔らかくなって甘くなるんですよ!」

えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ

それホント!? ストレスっていったって、ぐにゃって曲がる瞬間はたしかにストレスかかるかもしれないけどさ、いったん方向が落ち着いた後は、ストレス感じないんじゃないかな?なんて、意地悪く思ってしまった。

しかし、柔らかさについては「触ってみて下さい」といわれるままにギュッとネギを握ってみると、たしかに千寿葱のごときギュウギュウに葉柄(ようへい)部が詰まった長ネギと比べると柔らかい。

「これ、曲がった部分の両端ですこし皮の長さが変わるから、葉柄に隙間ができやすくなって、それで柔らかいということらしいんですよ。」

えええええええええええええええええええ なるほど、、、、、、、 それは理屈として通っているかも知れない。通ってる気がするだけかも知れない。うーーーーーーーーーん、、、

「実際に、断面をみて下さい。」

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ほら、葉柄の重なりが少し不均衡になってますよね。これが柔らかさに作用していると思われるんです。

な、なるほどぉ、、、なんか、確かにそうなのかも知れないと思ってきた! まあいいや、どちらにしても美味しければ! ということで、食べてみましょう。

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わたくし、ネギ星人といっていいほどネギ類が好き、家で味噌汁のむときもひややっこ食べる時も「ネギねぎ葱ネギ」言ってるので、ネギ星人と呼ばれてます。なのでそのままかぶりつき。最初、甘みがほとばしる!

「甘い!」

でも、ネギ星人だから、この後に地獄が来ることもわかってる。 甘いのはほんの1,2秒で、そこから地獄の辛さがやってくる。ブヒィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!

「いくらなんでも、生かじりはちょっと、、、美味しい成分がおおいから、生だと辛いですよ! でも、こうやって食べるとほんとうに美味しいんですよ。ネギを細く薄く切って、油揚げをサッと炙ったものと混ぜて、七味を振って醤油で味付けするだけ。」

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うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
こ、これは旨い!

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そして、アルミホイルに包んでたき火やオーブンに突っ込んでおくだけの、一本ネギ焼き!

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あえて醤油でなく塩で食うのが旨い!
しかも、さっきの地獄の辛さが消え、トロットロのジュースと甘みに変容。ネギ好きにはタマラナイ逸品であります。

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いや、これ実に最高。産地の皆さん、ありがとうございました!

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ちなみにこの曲がりネギは、仙台市場に入っている仲間である「庄定」という仲卸さんが扱っています。

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曲がりネギの出荷荷姿を見て、思わずニヤリ。

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なんてスペースの効率が悪いネギなんだろう、、、(笑)

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けれども、仙台の青果業者はこの曲がりネギを大事にだいじに扱っている。仙台っ子はぜひこの曲がりネギで鍋を仕立てて欲しい。もし東京でこれをみかけたら「なにこれ、B級品?」などと思わずに、真っ先に買っていただきたい。これから寒くなる時期が本番である。庄定の恵ちゃん、早坂さん、照井君、高橋君、ご案内をどうもありがとうね!