休日は裏山にトリュフを採りに行こう! 三浦半島で日本のトリュフを大量に採ってフレンチを堪能した!

2004年11月24日 from 食材





「ヤマケン、なんか三浦でトリュフがごろごろしているらしいから、採りに行きましょう!」

と、長島農園の勝美君から連絡があった。こういう面白そうなことがあると必ず電話をかけてくるのがヤツである。

日本の山林でもトリュフが採れるということは、以前から知ってはいた。それで町おこしの起爆剤にしようとしている事例があったりするが、まだ大々的に実現したところはないはず。安定的に採れない要因があるのだろうし、味についてもホンモノとは若干違うのではないか、と推測していた。しかしそうはいってもトリュフである。折しもこれからのジビエの季節がトリュフ大活躍の場ではないか!これは食い倒れ党首としては行くしかないだろう。

ちなみに今回の案内をしていただけるのは、神奈川県のキノコ研究家であるSさんである。

「これから採りに行く場所は、絶対に内密にしてください」

と言われているので、場所は書けない! 三浦市内だということだけでご勘弁いただきたい。

「でも、実は皆さんの近所でも採れるはずなんですよ。その生育条件さえ分かっていれば、案外お近くに見つけられるはずです」

とSさんは仰る。13時半に声をかけていただいた10人くらいで集合し、まずはA4サイズのプリントを配布され、講義。

以下、Sさんに教わったこと。

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・トリュフとは正式にはセイヨウショウロ属菌と言う。チャワンタケというキノコの仲間が地下に潜って円くなったきのこである。

・ブナ科の樹(スダジイ、シラカシ、コナラ等)かカバノキ科(イヌシデ等)、マツ科(クロマツ等)などの樹木の下に発生します。

・重要なのは、「攪乱地(かくらんち)」に発生しやすいということ。攪乱地とは、造成される等で一度掘り返されたりして、攪乱された土地という意味。従って、古くから人の手が入っていない山奥などには逆に発生しにくい。案外、都会の公園なんかでも、樹があって攪乱地であれば獲れるかも。

・ちなみにフランスで食べられている黒トリュフはペリゴールという品種だが、残念ながらこれと全く同じものが日本で獲れるというわけではない。日本を含む東アジアでよく獲れるのは、学名T. indicum 和名イボセイヨウショウロという品種である。ただしこれも強い香りを発する。
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ということなんである!日本であろうとどこあろうと、条件が整えば発生するのであった!

まあしかし、品種が違うと言うことで、合点がいく。我々の業界でいえば、アールスメロンという高級品種と、アンデスメロンの違いという感じか。でも、アンデスメロンも実に旨い。だからそれくらいの気持ちで採取すればいいな、という感じだ。

「では、知識がついたところで現地に行きましょうか。」

と車で集合場所のとある公園から5分。車がビュンビュン走る公道のすぐ脇にある森林に分け入っていく。分け入ると言っても、数十年前にデベロッパーが植林をした造成地である。つまり、攪乱されているということだ。


これをずんずんと進んでいくのかと思いきや、公道から5分も歩かないうちに佐々木氏の足が止まった。

「さて、この辺で獲れるんです。足下の落ち葉をどけて、地面を見つめてください。トリュフは土中ではなく地表に出ていますので、すぐに分かるはずです。絶対に地面を掘らないように!掘ってしまうと翌年には発生しませんよ。」
と言うので、目をこらす。長島勝美君がすぐ横で興奮した声で「あ、ほんとだ有ったあった!」とはしゃぐ。マジ?

あったぁ! この写真の真ん中に写っている、動物の糞のような丸いのがそれである。

これかよぉ、、、と感慨に浸る間もなく、落ち葉をどかしただけでゴロゴロとしているのである。

「おおおお 次々に見つかるじゃん!トリュフ犬なんていらないじゃん!」

と一同もう狂乱である。

学者肌のSさんは、資源として取り尽くされては困ると践んだのだろう、開始10分後くらいには「はい、もう終了!しゅーうーりょーうー!」と声をかけて皆を引き戻した。菌が生えているシロには、基本的に人が入って荒らすのは困るのだ。

改めてみると、このゴツゴツしたマツボックリ状の物体がトリュフなのである。

Sさんが小刀で二つに割る。すると断面にはマーブル模様が入っているのがわかる。

「このマーブル模様が見分け方の決め手です。よく似た感じのキノコがありますが、割ってみてください。こういう模様があれば大体トリュフです。」

やたらとマニアックなキノコ辞典のような海外の本を引っ張り出し、僕らが採取したイボセイヨウショウロの写真を見せてくれる。いや、実に面白い!

何が面白いって、条件さえ合えば、このトリュフが都会の町中にもあるかもしれないのだ。痛快だな!

Sさんに御礼を言って解散。なんと、埼玉の川越からわざわざ駆けつけたキノコマニアの方もいらっしゃった、面白い一団であった。


さて
勝美君と、シエラザードへ行く。シエラザードは長島農園の野菜を購入し料理に使っているフレンチレストランである。横須賀には珍しいきっちりとした素晴らしい料理を出す店だ。以前のこのエントリをみていただきたいのだが、ここのジビエは旨いし、見た目も麗しい!このblogの写真の中でも最も旨そうに撮れているエントリだと思う。


さて
伊崎シェフに見せると、「おお~ほんとうだ!」と興奮。

トリュフはまずこのごわごわの外側をナイフで剥く。剥いた皮も薫り高いので、容器に入れて油を注げば、トリュフの香りがオイルに移るという。
さてこの美しいトリュフの薄切りをみていただきたい!

この断面にあるマーブリングが、トリュフの証である。なんて美しいのだろう!

ちなみに、一つのトリュフはあまり香りが漂ってこないが、もう一つの色が濃い方は、プンプンとトリュフ香が立ち上ってくる!

トリュフといえば、卵との相性が抜群によいことで有名だ。なので、まあ今回は味見ということで、トリュフを刻み込んだオムレツを焼いてもらう。

「昔、ホテルに勤務していた頃以来だなぁ、オムレツなんて」といいながら、フライパンをポンポンと叩き丸め込んでいく。

大量にトリュフの入ったオムレツができあがる。同じ量をフランス産のトリュフでやったらどうなっちゃうんだろう?かなり怖~い、、、

さて味はどうか? 濃い色の成熟したトリュフからは、間違いなくあの芳香が立ち上った!ペリゴール種とは香りの性質は違うのだろうが、でもトリュフの香りだと言うことはきちんとアイデンティファイできる!

「いやぁ、すごいね、粗刻みのトリュフを噛みしめると、ブワって香りが立ち上るね。これ、一日目でこんなに薫るんだから、もっと熟成させたら大変なことになりそうだね!」

トリュフは米をしいた密閉容器にふんわりとおいておく。米のおかげで水分調節ができるのだ。これは、シエラザードにプレゼント。

いや、面白い!間違いなくホンモノのトリュフであった!先に挙げた条件が満たされる場所で有れば、身の回りにトリュフが落ちているかも知れないぞ!ぜひ皆さん、お近くの公園や林の中を散策してみてください。

繰り返し注意しますが、掘り返してはダメ!次年度に発生しなくなります。地表に顔を出しているケースが多いので、それを採るに留めること。

シエラザードではこのオムレツの他に、今年初の野鴨などをさんざん食べたので、これはまたアップしますね、、、いや、いい一日だった!

※当然ながら、トリュフが採れるかどうか、そしてそれらしきものがあったとしても、食べるかどうかというのは個人の責任でお願いします。もし何かあっても責任はとれませんので悪しからず。